2021年12月に富士スピードウェイで鮮烈な日本デビューを飾った新型アウディRS3。それから約1年の時を経て、ようやく公道でその走りを試す機会を得た。ここではニュルブルクリンクで育てられた速さとそれを支える秘密を紐解いていく。(Motor Magazine 2023年1月号より)

あらゆるシーンにおいて走りを楽しめる万能選手

まず、都内の一般道ではRSモデルとは思えないほどしなやかな乗り心地を示してくれた。とにかく、段差などに対するタイヤの当たりが柔らかく、ゴツゴツとした印象を与えないのだ。しかも、ドライビングモードをコンフォートにしておけば、ダンパーが強引に姿勢変化を抑え込むこともなく、フンワリとした乗り心地を味わえる。

画像: 0→100km/hのタイムは3.8秒。さらに2021年9月にはニュルブルクリンク北コースでコンパクトクラス最速となる7分40秒748のラップタイムを記録した。

0→100km/hのタイムは3.8秒。さらに2021年9月にはニュルブルクリンク北コースでコンパクトクラス最速となる7分40秒748のラップタイムを記録した。

ただし、市街地では快適と思われたコンフォートモードも、高速道路に入ってペースが上がるとやや落ち着き不足のように思えてくる。そんなときにはオートモードを選べば、過剰でない範囲でフラット感が高まり、心地いい高速クルージングが楽しめる。

いずれにせよ、こうした乗り心地の水準は従来型のS3に匹敵するもの。そういえば、新型S3は状況次第でA3よりも快適になりうる。いや、使われているダンパーが良質なせいか、S3のほうがむしろ快適とさえ思えるほど。こうした「A」「S」「RS」の「序列を越えた下剋上」がひんぱんに起きているのが、アウディのスポーツモデルの現状である。

注目の5気筒エンジンは、アルミ合金製に切り替わった先代から独特のビート感が薄れ、4気筒と言われても信じてしまいかねないほどスムーズな回転フィールだ。これでエキゾーストノートが抜けのいい快音であれば、もはや言うことがないのだが、それは望みすぎというものだろう。

ワインディングロードに足を踏み入れたところで、さっそくドライビングモードを切り替えてみる。この段階では、まだタイヤの限界にはほど遠いペースだったが、それでもステアリング特性がはっき
り変わることが実感できた。なにしろコンフォート、オート、ダイナミックと切り替えていくたびにクルマが積極的に向きを変えようとする傾向が強まっていくのだ。

これに気を良くして徐々にペースを上げていく。アウディらしい、コーナリング時の安定した姿勢はこのRS3にもしっかりと受け継がれていて、おかげで路面がうねっていても最小限の修正舵を加えるだけで済む。こうしたスタビリティの高さには「クワトロ」も間違いなく貢献しているはずだ。

走りの質感では、従来のCセグメントのスポーツモデルの水準を大きく超えているように思えたRS3。果たしてライバルたちと比べるとどうなのか。これについては、このあとに続く比較テストでじっくり紹介することにしよう。(文:大谷達也/写真:永元秀和、井上雅行)

※2022年12月15日、記事内容を一部修正いたしました。

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