新型レジェンドが、レベル3自動運転車として国内初の型式認定を取得、レベル2技術搭載車でも、条件付きながらハンズオフ運転が可能になるなど「自動運転」の魅力が次第に身近なものになりつつある。高度な運転支援技術が普及していく一方でちょっと気になるのは、「万が一」の時の対応だろう。もしも「クルマにお任せ」で走っている時に事故を起こしてしまったら「責任は誰にある?」「保険はちゃんと使える??」。

自動運転モードの分だけ保険料が安くなる「自動車保険」の新種も

横浜地裁の判決の中でもう1点注目したいのはすでに、加入していた任意保険を使った示談交渉が進んでいたところだろう。民事責任については自動車損害賠償保障法の解釈として、従来通り「運行供用者および運転者」が責任を負うことになっていることから、いわゆる自賠責保険もそれに基づいて扱われる。運行供用者や運転者以外に被害を被った相手に対しては、補償の対象となるわけだ。自損事故の場合も従来どおりで、任意保険による対応が求められる。

画像: 東京海上日動火災保険会社が2016年11月に開発を発表した「被害者救済費用等補償特約」は、2017年4月から提供を開始。その後、自動車保険業界のスタンダードになったという。

東京海上日動火災保険会社が2016年11月に開発を発表した「被害者救済費用等補償特約」は、2017年4月から提供を開始。その後、自動車保険業界のスタンダードになったという。

なにより、まずは被害者の利益(つまり補償)が優先されなければならない。だがさまざまな形で運転者をサポートするシステムが普及していくにつれて、単純に事故当事者同士の責任按分だけを判断するのでは難しいケースも発生しうる。メーカーだけでなくシステムを開発したソフトウェア事業者なども賠償義務者として考えられることから、「誰が責任を負うべきなのか確定する」までに時間がかかる可能性も高い。

そうした状況にあっても被害者救済を迅速に進めるために、東京海上日動火災保険株式会社が2017年4月から「被害者救済費用等補償特約」の提供をスタート、他の損害保険会社からも同様の商品がリリースされている。実質的にはこれが、自動運転に関連する業界初の保険商品と言われている。

自動運転車に対応した任意保険の概容については、「損害保険料率算出機構(略称:GIROJ)」が2020年3月に取りまとめた冊子「自動運転における損害賠償責任と保険」の一項目、「自動運転に対応した自動車保険」の記述がわかりやすい。

■自動運転に対応した自動車保険とは

自動運転システムの欠陥やハッキングにより事故が発生した場合、ドライバー等の出来人の有無が判明するまでには時間を要すると想定されることから、これまでの自動車保険では迅速な被害者救済を図ることができません。そのため、多くの保険会社では、事故発生当初に法律上の損害賠償責任が不明または存在しない場合でも、被害者の損害を補償する保険(被害者救済費用等補償特約:一部を除き一般的に自動付帯される)を販売しています。(損害保険料率算出機構「自動運転における損害賠償責任と保険」より抜粋)

2020年7月には、あいおいニッセイ同和損保が国内初の「自動運転モード」に対応した保険商品の提供開始を発表した。同社の「タフ・つながるクルマの保険」では、コネクテッドカーから取得される走行情報をもとに、自動運転モードが作動中の「走行距離・運転挙動」を運転分保険料に含まず、実質無料化されていた。

画像: 「自動運転中の運転分保険料を無料化!自動運転を使うほど安全・安心・お得に」の謳い文句で2020年7月30日に発表された「タフ・つながるクルマの保険」の保険料例。(数値は発表時のもの)  www.aioinissaydowa.co.jp

「自動運転中の運転分保険料を無料化!自動運転を使うほど安全・安心・お得に」の謳い文句で2020年7月30日に発表された「タフ・つながるクルマの保険」の保険料例。(数値は発表時のもの)

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2020年11月には、やはり東京海上日動火災保険株式会社が自動運転中に事故が発生した場合を、いわゆる「ノーカウント事故」の対象範囲として解釈。保険を使っても、更新時の保険料に影響しない改定を行っている。これは、2021年4月以降に適用が始まる同社扱いのノンフリート自動車保険すべてを対象に、適用されている。

ちなみにオーナーカー向けではないが、移動サービスの実証実験事業者などに向けて「レベル4」まで対応した道路交通法の改正案が、2022年4月に国会で成立している。またやはりそうした自動運転移動サービス事業者向けの保険商品も、あいおいや損保ジャパンなどからすでに提供が始まっている。

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