新型レジェンドが、レベル3自動運転車として国内初の型式認定を取得、レベル2技術搭載車でも、条件付きながらハンズオフ運転が可能になるなど「自動運転」の魅力が次第に身近なものになりつつある。高度な運転支援技術が普及していく一方でちょっと気になるのは、「万が一」の時の対応だろう。もしも「クルマにお任せ」で走っている時に事故を起こしてしまったら「責任は誰にある?」「保険はちゃんと使える??」。

あくまで「中立」であり精度の高い「記録」が必要だ

もっとも、こうした保険商品の付加的サービスや新商品はあくまでも迅速性を重視しているもので、運転者の責任をまるっとスルーしてしまうわけではない。一般化している「被害者救済費用等補償特約」でも、法律上の損害賠償責任がないことが認められなければ、補償してもらえないのだ。

■「被害者救済費用等補償特約」の概要

(1)補償内容
ご契約のお車に想定していない動作が生じたことにより事故が生じ(※1)、被保険者に
法律上の損害賠償責任がないことが認められた場合、被害者に生じた損害を被保険者が負担
するために支出する費用を補償します。(※2、※3、※4)
※1 客観的な事実により確認できる場合に限ります。
※2 被保険者に法律上の損害賠償責任が認められる場合、現行の賠償責任保険で補償します。
※3 本特約保険金を請求するか否かの決定は被保険者の選択によります。また、被害者に生じた損害額のうち、
被害者自身の過失により生じた損害額等を控除した額を保険金としてお支払いします。
※4 本特約により当社が保険金をお支払いした場合、当社は賠償義務者に対する損害賠償請求権を取得します。(東京海上日動火災保険株式会社リリースより抜粋/2016年11月8日)

「誤作動」の場合をはじめ、運転者が自分に責任がない、あるいは責任按分が少ないことを主張するためには、やはり事故直前から衝突時、その直後の運転状況やシステムの作動状態、クルマの挙動などの「記録」をしっかり残し、そこから何があったのかを証明することが必要なことは間違いない。

とくに刑事責任の有無と軽重が問われる案件に関して、自動運転車の場合は事故と被害に対する因果関係のあるなしを判断するだけでもひと苦労しそうだ。自動車という製品に対する製造物責任を問うだけでも、これまで以上に複雑な「関係者」の存在が想定される。

さらに精密なシステムを滞りなく動作させるための整備とか、ソフトウェアのバージョンアップなどについても、注意義務違反が問われる対象がよりややこしく広がっていくかもしれない。

国土交通省としても、交通局を中心に自動運転車の事故に関する分析に対する取り組みは進んでいる。たとえば令和3年の予算請求の中では「事故発生時の自動運転システムや走行環境の状況、ドライバーの対応状況等様々な要因が考えられるため、総合的な事故調査・分析を客観性及び真正性を確保した形で実施し、速やかな事故原因の究明と客観性の高い再発防止策を講じる必要がある」と明記されている。

画像: 国土交通省自動車局がまとめた令和4年度予算請求の概案より。

国土交通省自動車局がまとめた令和4年度予算請求の概案より。

将来的には、事故を減らすためにデータベースを有効活用

画像: 責任の所在を明らかにするためには、ドライブレコーダーやEDRなどの「記録装置」を積極的に活用するべきだろう。もちろんそれは、自動運転車に限ることではないのだが・・・(画像はイメージです)。

責任の所在を明らかにするためには、ドライブレコーダーやEDRなどの「記録装置」を積極的に活用するべきだろう。もちろんそれは、自動運転車に限ることではないのだが・・・(画像はイメージです)。

高度な運転支援機能に乗る日常が普通になっていくにつれて、事故原因の究明はますます複雑化していく。とくに一般ドライバーにとっては「万が一」の時のために、刑事事件はもちろん民事案件についても「頼りになる相談相手=弁護チーム」のサポートが求められてくるような気がする。

「事故調査・分析を客観性及び真正性を確保」という面で言えば、システム上で改変の余地がないEDRデータはまさにその目的を達成するに最適な「証拠」だ。

2022年7月以降に発売された新型車に対して搭載が義務化されているイベントデータレコーダー(EDR)の記録を活用することで、衝突時の「リアル」を明確化できる可能性はぐっと上がってくる(26年5月からは現行車種でも新たに生産される車両には設置が義務付けられる)。

ただしそのデータを読み出した上で分析・解析を行うためには、ボッシュ株式会社が認定するEDR読み出しの有資格者「CDRアナリスト」に依頼することが必要だ。裏返せば弁護士を中心に、CDRアナリストも含めた専門性の高いプロ集団がチームを組めば、事故原因にまつわる責任の所在について、よりわかりやすく証明することができそうだ。

さらにそうしたフォーマットとしての検証体制の構築を進めることは、集約されたデータと分析のノウハウ、結果などの蓄積にもつながりうる。そられを貴重な財産として、有効活用するのだってアリだ。「今そこで起きた事故」の原因や責任按分を明確化するだけでなく、将来的に事故検証、分析の精度を高める意味でも、有意義な取り組みになりうるのではないだろうか。

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