「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、スバル BRZ(初代プロトタイプ)だ。

ドリフト志向の86とは、かなり特性が異なる

画像: FA20型エンジンは排気系やオイル溜まりの形状を工夫して、クランクシャフト位置で60mm低くマウントすることを可能にした。

FA20型エンジンは排気系やオイル溜まりの形状を工夫して、クランクシャフト位置で60mm低くマウントすることを可能にした。

ここまでのプロセスで、すでに86との違いがはっきりと分かってきた。まず、ブレーキングからステアリングを切り始めたとき、若干の溜めや粘り感がBRZにはある。86の姿勢変化はもっとシャープで、コーナリングしていてもロールが進むにつれてフロントに荷重が移っていく印象がある。だがBRZではリアに荷重が残っている感じがする。

この特性の違いは、やはりサスセッティングにあるようだ。体感的にいえば、BRZは86に比べてスプリング、ダンパーともにソフト方向にセットされているようだ。しかもフロントよりもリアを、さらにソフトにセッティングしている感覚だ。あえて限界域を超えた領域に達すると、86との違いはさらにわかりやすく伝わってくる。ややオーバースピードでコーナーに飛び込んで行った時、BRZは基本的にアンダーステアの性格であることがわかる。リアタイヤが常にグリップしようとするあたりに、「ドリフトコントロールの良さに振ったクルマ作りはしない」という、スバルらしい哲学を感じる。スポーツVSCモードの味付けも頼もしい。

そういう意味では、比較的ドリフトしやすい方向へと振った86とは、やはり方向性が異なっているのだ。もちろんBRZも、ブレーキの使い方次第ではオーバーステア→ドリフトへと持ち込むことが可能だ。ただし、それを御するにはそれなりのスキルが必要になることを忘れてはいけない。ある程度のドライビングテクニックを持つ人ならば、誰でもドリフトを楽しめるようにという、86の指向とは明らかに違う。

とはいえ、BRZも86も、その魅力の真髄はボクサーエンジン×FRのコンビネーションが育んだ素性の良さがあるからこそ生まれたもの。こうした選択肢の幅広さ、奥深さで迷い悩むことが素直に楽しめる幸せを、改めて感じさせてくれた。

画像: 基本的にアンダーステアで、リアタイヤが常にグリップしようとするあたりにスバルの哲学を感じる。

基本的にアンダーステアで、リアタイヤが常にグリップしようとするあたりにスバルの哲学を感じる。

スバル BRZ S(市販モデル) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4240×1775×1300mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1230kg
●エンジン:水平対向4 DOHC
●総排気量:1998cc
●最高出力:147kW(200ps)/7000rpm
●最大トルク:205Nm(20.9kgm)/6400-6600rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●JC08モード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:215/45R17
●当時の車両価格(税込):279万3000円

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