同乗者への配慮も盛り込まれた先進運転支援システム
走りについても力が入っている。350Nmの最大トルクを発生する2L直列4気筒ターボエンジンは、ターボチャージャーにツインスクロール式を採用しているのがポイントだ。これによりターボラグのない俊敏なスロットルレスポンスを実現し、加速フィールもなかなか力強い。これに量販車で最多段となる10速ATが組み合わされていることにも注目だ。
もちろん力強さだけでなく、高速走行をはじめとした低負荷時に4気筒エンジンのうち2気筒を休止するシステムも搭載して燃費低減も図られている。しかも、この切り替わりがいつ行われたのかわからないほど制御はスムーズである。
足まわりの仕上がりも上々で、ドライブフィールはいたって現代的だ。軽量化と剛性向上を図った最新のプラットフォームはもちろん、ZF社製MVSパッシブダンパーが実によい仕事をしていて、俊敏で一体感のあるハンドリングを実現している。今回の試乗車である「スポーツ」はインテリジェントAWDを採用してライントレース性も高く、操縦安定性にも優れている。
ドライブモードは「ツーリング」、「スポーツ」、「雪/凍結」から選択でき、シフトスケジュールやハンドリング、ブレーキフィール、前後トルク配分、エキゾーストサウンドなどがモードごとに変化する。さらにもうひとつ、ハンドリングとブレーキ、エキゾーストサウンドの調整をユーザー自らカスタマイズできる「マイモード」も用意されている。
先進運転支援システム系の装備についても、サイドブラインドゾーンアラートやリア歩行者検知なども含め現状でこれ以上はないほど充実している。特筆すべきは、シートの座面を部分的に振動させて注意を喚起するキャデラック独自の機構だ。振動した場所によって、危険がどの方向から迫っているのか直感的に把握できということ、そして同乗者を音で驚かせないための画期的なアイデアだ。
日本市場におけるグレードラインナップはFRの「プラチナム」と4WDの「スポーツ」とシンプルだが、最近値上がり傾向の輸入車の中にあって、これだけ装備が充実したプレミアムカーをこの価格帯で手に入れられるのかと、あらためて感心した次第である。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)
キャデラック CT5 ラインナップ
プラチナム(FR):690万円
スポーツ(4WD):770万円
キャデラック CT5 スポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4925×1895×1445mm
●ホイールベース:2935mm
●車両重量:1760kg
●エンジン種類:直4 DOHCツインスクロールターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:177kW(240ps)/5000rpm
●最大トルク:350Nm/1500-4000rpm
●トランスミッション:10速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・66L
●タイヤ:245/40R19
●車両価格(税込):770万円