死亡交通事故ゼロの実現に向けて取り組んでいること
一方、「予防安全」とは事故を直前で回避する能力のこと。その象徴的存在が、2008年5月に登場した「アイサイト」である。コストを抑えながらも、歩行者や二輪車までも対象としたプリクラッシュブレーキや、全車速追従機能付きクルーズコントロール等を実現した画期的な運転支援システムである。その搭載車の世界累計販売台数は、2022年6月に500万台を達成している。
2020年にレヴォーグに搭載されて登場した新世代アイサイトでは、視野角を大幅に広げた新開発のステレオカメラと画像認識ソフト・制御ソフトの改良を組み合わせ、より幅広いシチュエーションでの運転支援が可能となった。さらに新型クロストレックには、新たに「広角単眼カメラ」を国内で初搭載したのもトピックだ。
そのほか、新世代アイサイトに前後4つのレーダーや高精度地図ロケーターなどを組み合わせた高度運転支援システム「アイサイトX」もレヴォーグを皮切りに国内展開が始まった。今後もアイサイトのさらなる進化が期待される。
そして現在、スバルが取り組んでいるのがリアルワールドで起きている事故の形態と発生原因のデータ収集と分析、それをフィードバックしたクルマづくりだ。視界の良いクルマづくり、走行安全や予防安全による動的安全性能のさらなる向上を目指すとともに、万が一衝突してしまった際に、クルマが命を守るための仕組みの開発に力が注がれている。
国内はもちろん米国を始めとする各国の研究調査機関や大学、さらには医療機関とも連携し、原因と状況、そして結果を分析。そこで得られるデータを日々の開発にフィードバックしている。急増しているサイクリストとの事故をもカバーする技術の研究開発も急いでいるという。
より多様でシビアな衝突にも被害を軽減し、死亡事故を減らすスバルの総合安全技術群。2030年の目標達成に向けて、その取り組みはますます加速しているようだ。(文:阪本 透/写真:永元秀和、スバル)
ミニコラム:スバル360から始まった安全性への意識
一瞬の判断ミスや誤った操作が深刻な事態をもたらす航空機の世界では、設計の段階から視認性や操作性が何よりも優先される。スバルのクルマは前身である中島飛行機のDNAを継承しており、初の量産車であるスバル360(1958年市販開始)以降、一貫してその開発思想を色濃く反映してきた。ちなみにスバル360は開発に際して、いち早く実車による衝突安全実験を採り入れていたことでも知られている。