アウディが作り上げた、前例のないBEVレーシングカーのプロトタイプ「S1 フーニトロン(Hoonitron)」が日本で特別展示された。そのディテールを写真で紹介しよう。
伝説的なラリーマシン「スポーツクワトロ S1」がモデル
このマシンの正式名称は、「アウディ S1 eトロン クワトロ フーニトロン」。1980年代のWRCで活躍した伝説的なラリーマシン、「スポーツクワトロ S1」をモデルにした、ファストバックのクーペスタイルが特徴的だ。だが、その中身は現在のアウディ市販モデルおよびモータースポーツ用の電動駆動システムを搭載した、スーパーBEV(バッテリー電気自動車)なのだ。
外寸などのスペックは公表されていないが、ホイールベースは2.4m未満で、A1スポーツバックの2563mmよりも大幅に短い。これにより、コーナリング時の俊敏性が向上し、ドリフトコントロールもしやすい。前後のサスペンションにはマクファーソン ストラット式を採用し、200mm以上のストロークがあるスプリングと組み合わせて、ジャンプシーンなどの過酷な走行に対応できる。
1基あたり55kg(トランスミッション含む)という軽量のモーター ジェネレーター ユニット(MGU)を前後に2基搭載した電動4WDで、14.4kWhの高電圧バッテリーを4基搭載し、作動電圧は800V。システム合計の出力は500kW、トルクは640Nmを発生する。最高速度は200km/h以上に達する。
このマシンの開発と、プロモーションムービーで卓越したドライビングを見せたアメリカのラリードライバー、ケン・ブロック氏は、2023年1月に不慮の事故で急逝した。もう二度と見られない、ブロック氏が駆るS1 フーニトロンのスーパーパフォーマンスは、以下の動画でご覧ください。