2022年のカングージャンボリーではじめて姿を現した日本仕様の新型カングー。ガソリンターボエンジンとディーゼルターボエンジンを搭載したそれぞれのモデルに試乗することができた。

熱狂的ファンを生み出したカングーの第三世代

日本におけるカングーファンの熱烈さやカングージャンボリーの盛況さは世界一だと言えるだろう。それはルノー本社にもしっかりと伝わり、日本はカングーにとってもっとも重要な国という存在になっている。

画像: スチールホイールに黒バンパー、そして観音開きのバックドアなど、商用車テイストをふんだんに盛り込まれた仕様。

スチールホイールに黒バンパー、そして観音開きのバックドアなど、商用車テイストをふんだんに盛り込まれた仕様。

2022年10月に久し振りにリアル開催されたこのイベントには、フランスから地元テレビ局が取材に来るなど、大きな話題になっているようだ。ルノージャポンによると、もちろん2023年も開催予定とのことなので、新型のカングー登場というビッグニュースもあり、これまで以上の盛り上がりが予想される。

さて14年ぶりに完全刷新され、3世代目となった新型カングーだが、ひと目でカングーだと誰もがわかるそのデザインは、多くのカングーファンから歓声をもって迎え入れられるだろうと感じた。さらに新型の詳細を見れば見るほどカングーらしさはそのままにあらゆる部分が進化していることがわかった。

今回は、そんな新型カングーに試乗することができたのでその印象をレポートしたい。

カングーの進化はワインディングロードでも感じられる

パワートーレーンのラインナップはガソリンターボエンジンとディーゼルターボエンジンのふたつ。前者の排気量は1.3Lで後者は1.5L、どちらもトランスミッションには7速EDC(湿式DCT)を組み合わせる。

画像: カングーの乗用モデルで、黄色ボディと黒バンパーの組み合わせは日本専用なのだという。

カングーの乗用モデルで、黄色ボディと黒バンパーの組み合わせは日本専用なのだという。

軽快な走りが印象的だったのは、1.3L 直4ガソリンターボエンジン搭載車だ。最高出力131ps/最大トルク240Nmを発生するH5H型エンジンは、ルノー・日産・三菱のアライアンスとダイムラーによって共同開発されたもの。WLTCモード燃費は15.3km/Lとなる。車両重量は、ガソリンモデルが1560kg、ディーゼルモデルが1650kgでその差が90kgとなる。

1.5L 直4ディーゼルターボエンジンは116ps/270Nmを発生するK9K型である。DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)はPM(粒子状物質)を約99%、SCRがアドブルーを噴射することでNOxを約90%除去するこのクリーンディーゼルエンジンのWLTC燃費は17.3km/Lとなる。トルクフルで力強い走りは1.5Lディーゼルエンジン搭載車だった。長距離を走る人や低回転域の力感ある走行フィールが好きな人はこちらがオススメだ。

新型カングーが採用するプラットフォームは、ルノー、日産、三菱が開発したミドルクラス用CMF-C/Dとなる。試乗すると静粛性がかなり向上していることに気が付く。実はこれ、遮音材を追加し、すべての窓ガラスの厚さを厚くした効果である。

新型カングーは、ワインディングでも明らかに姿勢変化が少なくフラットな乗り心地だった。ロールが少ないので運転して安心感も高いし、楽しい。さらにステアリングギアレシオが従来の17:1から15:1とクイックになり、切った分だけ曲がる上にハンドル操作にボディがすぐ反応する。またフロントブレーキに新設計のキャリパーを採用するなど強化されている。そのブレーキを操作したときの制動フィールもとても自然であった。

日本専用の仕様が存在する新型カングーのボディカラー

高速道路では先進運転支援システムのACC(アダプティブクルーズコントロール)をテストした。セット方法は、ハンドルに用意されるスイッチで車間、速度などを設定するだけである。前車との車間維持にも違和感は感じられないし、安心してクルージングを任せることができた。

画像: 三角窓の採用で視界を大きく拡大した新型ルノー カングー。

三角窓の採用で視界を大きく拡大した新型ルノー カングー。

高速道路も目地段差なども衝撃をすぐに抑え、荒れた路面でも乗り心地を快適に維持するように振動が上手く丸められている。これなら家族でのロングドライブも楽しいだろう。オーナーになったら家族みんなでぜひとも遠出を楽しんでもらいたい。ルノーがカングーで提案しているのは「ルドパルス(遊びの空間)」である。しかし新型ではその世界観がさらに広がり「もっと遊べる空間」になっている。

ドライブモードは「ノーマル」、「エコ」、「ペルフォ」の3つが用意される。「エコ」モードはエンジン出力や変速タイミング、さらに電動パワーステアリングのアシスト力を変更して燃費重視に、「ペルフォ」モードは積載量などが多いときなどパワーが必要なときに選ぶことができる。

日本仕様において特別なのは「ブラックバンパー」で、日本では一番カングーらしい仕様と言えるかもしれない。さらにカングーのアイコンとも言えるダブルバックドア(両開きドア)も健在、これはライバルにはない特徴であり、このブラックパンパーとダブルバックドアの組み合わせは日本仕様のみの設定なのだという。ルノー・ジャポンの努力の成果だろう。

話は少し逸れるがルノー・ジャポンと言えば、2022年の日本での販売台数を8618台(※JAIA(日本自動車輸入組合)調べ)とし、設立以来の新記録となった。コロナ禍、半導体&部品不足という逆境の中、素晴らしいことだと思う。さらにフランスブランドの中で輸入販売台数ナンバー1となった。これは、先述したカングージャンボリーやきめ細かい日本向けの仕様を特別限定車で販売するブラックバンパー&ダブルバックドアの日本導入など購入者の視点にたった成果だと言えるだろう。

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