「大排気量」「マルチシリンダー」「高回転高出力型」聞くだけでワクワクするこのワード。ここで紹介する2台はそのすべてに当てはまる、いまや数少ない絶滅危惧種の2ドアモデルである。見た目がカッコ良いだけじゃなく、運転して最高に気持ち良い、この2台の魅力を存分に味わう。(Motor Magazine 2023年4月号より)

「ほぼレーシングカー」のような718ケイマンGT4 RS

私が担当した「2ドアモデル」は、ポルシェ718ケイマンGT4 RSと、レクサスRC F。この2台の共通項は、いずれも大排気量の自然吸気エンジンを搭載する「純内燃機関車」であり、「サーキットを走るととっても楽しい」レーシングスピリット満載の魅力的なスポーツカーであるという点だ。ダウンサイジングどころか電動化が進み、もはや、こんなスペックのクルマは今しか乗れないということで、その魅力をじっくり探ってみることにした。

画像: ポルシェ718ケイマンGT4 RS。公道でも隠しきれない戦闘力の高さ。

ポルシェ718ケイマンGT4 RS。公道でも隠しきれない戦闘力の高さ。

ポルシェ718ケイマンGT4 RSは、一見して唯ならぬ存在感を放っている。まず目に飛び込んできたのは大きなリアウイング。カーボンのウイングを、アルミニウム製の「スワンネック式」アタッチメントが支えている。これはWECやIMSAで活躍するGTレーシングカー、ポルシェ911 RSRと同じ形状であり、市販車の911GT3にも採用されるもの。そのため「ナンバープレートを付けたレーシングカー」のようなオーラを放っている。

リアビューの視線を下げていくとディフューザーがある。クルマの下を覗き込むまでもなく、ボディ上部を整流するウイングと同様、ボディ下部にはアンダーボディパネルが装備されることは想像に難くない。さらに、フロントにはサイドブレード付きリップスポイラー、フロントホイールアーチにはベントが備わり、車高は718ケイマンGT4より30mm下げられ、GT4より最大約25%大きいダウンフォースを発生する。

「空力」と同じく、デザインを特徴づけているのが、「軽量化」だ。エクステリアでは、フロントボンネットなどにカーボンが使われており、車両重量はGT4より35kg軽量の、1415kgとなる。

そして、4L水平対向6気筒エンジンをミッドに搭載し、500ps/8400rpm、450Nm/6750rpmというパワースペックを擁する。名前にGT4が付くので少々ややこしいが、実はこのエンジン、911GT3と同じものなのだ。このクルマがいかにタダモノではないかがわかるだろう。718ケイマンGT4から80psアップされ、組み合わされるローレシオの7速DCTと相まって、驚異的な加速力を発揮する。

サーキットで魅せた、キレッキレのパフォーマンス

奇しくも、試乗の直前、ポルシェエクスペリエンスセンターでこのクルマを走らせてきたばかりだったので、そのスパルタンなパフォーマンスはすでに確認済みだ。

画像: ともにサーキットで本領を発揮する2台だが、実力のほんの一部しか出せないワインディング路の試乗でも気持ち良い走りを見せた。(前:レクサスRC F “パフォーマンスパッケージ”、後:ポルシェ718ケイマンGT4 RS。)

ともにサーキットで本領を発揮する2台だが、実力のほんの一部しか出せないワインディング路の試乗でも気持ち良い走りを見せた。(前:レクサスRC F “パフォーマンスパッケージ”、後:ポルシェ718ケイマンGT4 RS。)

たとえば、ローンチコントロールを使ってスタートを試みると、電子制御がフル稼働しながら、有り余るトルクを抑え込みつつ必要な分だけタイヤに伝え、あっという間に100km/hオーバーに到達する加速感とか。カレラよりホイールベースが短く、ミッドシップでリア荷重も少ないため、限界でのハンドリングは電子制御を解除すると決してイージーではない。

だがその分、上手く操れた時の達成感や爽快感も倍増される。レブリミットは9000rpmで、回すほどにパワーがモリモリ発揮される高回転型のエンジン特性で、回転の上昇に比例して、こちらのアドレナリン分泌量も増していく。いずれにしても、「ほぼレーシングカー」のようなキレッキレのパフォーマンスであった。

そんなクルマを公道で乗るとなったら、まず気になるのが乗り心地だ。ところが、予想の上をいく快適性に驚いた。かなり締め上げられており、路面からの入力はダイレクトにお尻に伝わる。にもかかわらず、高速道路のジョイントでもハネないし、不快に感じる大きな入力はなく、軽さと快適性のバランス感覚が見事。ステアリング、ペダルもビシッとした剛性感とともに適度な重さがあるが、この「加減」もまたお見事。

ワインディング路では、「水を得た魚」の躍動感はありながら、3割程度で泳いでいる?というゆとりがあり、その限界の高さが公道での安心感にもつながる。加速の爽快感はいうまでもなく、ブレーキを踏むと、ブリッピングしながら自動的にシフトダウンする。でもこれ、ある程度強い踏力じゃないと反応しない。そんなことを発見していくと、うーん、やっぱりサーキットの限界域で走らせてみたい、という思いが強くなった。

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