1970年代の後半に大ブームが起き、今もなお人々を魅了してやまないスーパーカーたち。そんな懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまでを紹介していく、スーパーカークロニクル。今回は、チゼータ モロダー V16Tだ。

チゼータ モロダー V16T(CIZETA MORODER V16T:1989〜1993)

画像: ヘッドランプは2段のリトラクタブル式4灯というユニークなもの。ボディサイドのフィンは縦のものも存在する。

ヘッドランプは2段のリトラクタブル式4灯というユニークなもの。ボディサイドのフィンは縦のものも存在する。

1988年12月、アメリカのビバリーヒルズで、ユニークなスーパースポーツカーのモックアップが公開された。その名は、チゼータ モロダーV16T。一般的にはチゼータ V16Tと呼ばれることが多いが、正式にはモロダーが入る。チゼータとは創始者であるクラウディオ・ザンポーリのイニシャル「C.Z.」をイタリア語読みしたもの。モロダーは共同出資者だったミュージシャンのジョルジオ・モロダーの名だ。

そしてV16Tという車名が示すように、このクルマ最大の特徴は90度のV型16気筒エンジンを横置きミッドシップ搭載したこと。そのため、全幅は2mを超える。出力はクランクシャフト中央のギアで90度方向を変え、エンジンと直角にセット(つまり縦置き)されたクラッチ/ミッション/デフに導かれる。

スタイリングは、カウンタックなどで名を挙げた「鬼才」マルチェロ・ガンディーニの手になるもの。ディアブロ用にガンディーニが描いたデザインは、当時ランボルギーニの親会社であったクライスラーが大幅に修正を加えたため、修正前の原型デザインをチゼータで実現したとも伝えられている。

90年代初頭で1億円と、価格もスーパーだった

画像: ドアの開閉は普通のスイング式だった。このクルマは現在も河口湖自動車博物館に展示されている。

ドアの開閉は普通のスイング式だった。このクルマは現在も河口湖自動車博物館に展示されている。

6LのV16エンジンはランボルギーニ製のV8を2基接続したのではとの説がある一方、実際の点火順序などを調べてみると、最初から16気筒として設計されていたとの説もある。最高出力は550ps、最大トルクは55.0kgm。公称の最高速は328km/h、0→100km/h加速は4.2秒という高性能ぶりだった。

ジョルジオ・モロダーの支援を受けて開発されたV16Tは、1989年のジュネーブモーターショーでも注目を集めて興奮と衝撃を巻き起こし、1991年に生産を開始する。当時の価格は、80万ドル(当時のレートで約1億円)であった。

だが、モロダーの離脱やバブル景気の崩壊などの影響で、チゼータはV16Tをわずか15台を生産しただけで倒産する。ザンポーリは2003年にアメリカ カリフォルニア州に新会社を設立したが2021年に他界。それでも今もなお、チゼータ復活の噂は絶えていない。

チゼータ モロダー V16T 主要諸元

●全長×全幅×全高:4440×2060×1115mm
●ホイールベース:2690mm
●車両重量:1700kg
●エンジン種類:90度V16 DOHC
●総排気量:5995cc
●最高出力:550ps/8000rpm
●最大トルク:55.0kgm/6000rpm
●燃料:無鉛プレミアム
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式」横置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前245/40ZR17、後335/35ZR17

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