ユーザーは「よりスポーティでオンロード志向のモデルを望んでいる」
新型カイエンの開発をとりまとめたDr・ミハエル・ライター氏によれば、そのテーマは、第一に「オンロードのパフォーマンスにおいてベストクラスであること」だったという。
なぜなら、実際にカイエンを購入したユーザーを対象とした同社の調査によれば、これまでに28万台販売された初代カイエンで、実際にオフロード走行を行っていたのはわずか1%。ほとんどのユーザーは「よりスポーティでオンロード志向のモデルを望んでいる」という結果が出ていたからだという。
そこで新しいカイエンでは、オフロードでの性能に関しては、初代モデルに近いレベルは確保するものの、オンロードでいかにスポーティかつ快適な性格を実現できるか、そしてどれだけ高効率で優れた燃費を実現できるのかということが最前面に打ち出されたのだ。
ホイールベースは40mm延長されて、後席の居住空間が拡大、ボディサイズはやや大型化された。4WDシステムは副変速機がなくなり、プロペラシャフトや前後ファイナルドライブユニットの軽量化と合わせて約33kgの重量を低減。ボディ構造でも大幅な軽量化が図られて、初代カイエンとのボディ比で111kgも低減された。また燃費性能向上のために、エンジン本体の効率化と軽量化は当然のこととして、さらに8速ATや緻密なサーマルマネージメント制御なども採用された。
エクステリアのデザインは、ポルシェらしく全面的に曲面を活かした女性的な優美さが取り入れられたものとなった。室内の雰囲気や質感も、パナメーラで先行して展開されたイメージと、911との関連性を印象づけるメーターパネルなど、ポルシェならではの演出がふんだんに盛り込まれた。これまでのカイエンで課題と言われていた、インテリアの質感も大幅に向上されたのだ。
軽量化と8速ATの採用、よりポルシェらしい走り味
最初に試乗したのはカイエンS。ライプツィッヒ市内の道は、路面電車の軌道と、旧東ドイツ領内ということを感じさせる荒れた舗装路面がしばしば現れる。オプションのエアサスペンションとPASAM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメントシステム)、295/35R21サイズのタイヤを装着した試乗車は、硬めのセッティングのサスペンションによって細かな上下動で揺さぶられるものの、それは「ガツン」とではなく、衝撃のカドが取れて伝えられてくる。その意味で、乗り心地は悪くない。ただし21インチサイズの足まわりは、やや重たい印象を受ける。
最高出力が従来型より15psアップの400psとなり、パナメーラS用と同仕様となった4.8L V8エンジンは、気持ちいいエンジン音を発しながら回っていく。スムーズさがより増した印象で、力強さが際立つ。
8速ATは、従来の6速ATよりも、右足のペダル操作とクルマの動きにダイレクト感が強まった印象。100km/h時のエンジン回転数は8速で1600rpmほどで、静粛性や燃費面で大きな効果がある。
従来型カイエンが採用していたPTM(ポルシェトラクションマネージメントシステム)は、前後で38:62の基本駆動力配分比を備えた電子制御多板クラッチ式だった。それが新型のカイエンターボ/カイエンS/カイエン用のPTMでは、911ターボやパナメーラで採用されている、前後の駆動力配分を走行状況に応じて任意に可変させるアクティブ4WD方式となった。そのため、前後駆動力の定まった配分比というものはないが、基本的に駆動力はリア寄りで、運転している感覚としてはFRの2WFDモデルに近い印象だ。
アウトバーンでコーナーを抜けていく際も、ハンドルの操作に合わせてノーズが素直にイン側へと入っていく感じである。ハンドルのセンター付近での操舵感はしっかりと締まっていて、ハイスピード巡航時にも余計な不安感は覚えない。
また試乗車にはオプションのPTV plus(ポルシェトルクベクトリングプラス)も装備されていた。
これは、必要に応じてコーナリング中のイン側リアホイールに軽くブレーキをかけるシステムと電子制御式リアデファレンシャルが加わるもので、PTMやスタビリティコントロールと統合制御されて、よりダイナミックな走りと安定性を実現してくれるという。その効果も相まって、スポーティなFRモデルであるかのようなドライビングフィールを実感させてくれたのだろう。