1970年代の後半に大ブームが起き、今もなお人々を魅了してやまないスーパーカーたち。そんな懐かしいモデルから現代のハイパースポーツまでを紹介していく、スーパーカークロニクル。今回は、マクラーレン F1だ。

マクラーレン F1(McLaren F1:1993-1998)

画像: スーパースポーツカーらしい前ヒンジのディヘドラルドアは、その後のマクラーレンのモデルに継承されている。

スーパースポーツカーらしい前ヒンジのディヘドラルドアは、その後のマクラーレンのモデルに継承されている。

自らの名を冠したレーシングマシンを製作し、F1を初め多くのレースで勝利を得たブルース・マクラーレン。1970年に事故死した彼の果たせなかった夢は、マクラーレンの名を冠したロードゴーイングスポーツカーを世に送り出すことだった。

1992年、マクラーレン カーズ(現マクラーレン オートモーティブ)は、創始者の夢を実現した初の高性能市販車「マクラーレン F1」をモナコで発表した。エンジニアリングを手がけたのは、F1 GPマシンの設計でも知られるゴードン・マレー。デザインは、ピーター・スティーブンスが手がけた。

F1という名前が示すとおり、そのテクノロジーにはF1 GPマシンからのフィードバックが生かされている。カーボン(CFRP)製のモノコックフレームに縦置きミッドシップ搭載されるエンジンは、BMW製の6.1LのV型12気筒で、ヘッドを4バルブDOHC化して最高出力は627ps、最大トルクは69.3kgmを発生。当時「世界でもっとも出力の高いクルマ」として、ギネスブックに掲載されて話題となった。

組み合わされるトランスミッションは、エンジン後方に横向きにセットされた6速MT。最高速は400km/hに迫り、もはやRWDでは限界に近いパフォーマンスを発揮した。

中央に運転席を配するユニークな3シーター

画像: 運転席右にシフトノブとエアコンのスイッチ類、左にパーキングブレーキとオーディオのスイッチ類を配置する。

運転席右にシフトノブとエアコンのスイッチ類、左にパーキングブレーキとオーディオのスイッチ類を配置する。

スタイルもパワ−もアグレッシブだったが、けっして奇をてらったものではなく、とくにスタイルはスーパーカーのデザイン手法に則ったものだった。ただし、現在のマクラーレン車にも継承される、前ヒンジのディヘドラルドア(バタフライドアとも呼ばれる)を開けると、衝撃的なシート配列が目に入る。

中央に運転席を置き、その両脇に少し後方へオフセットした助手席を左右にセットした、特殊な3シーターレイアウトを採用するのだ。その理由は、1名乗車時の左右重量配分を適正化でき、しかもホイールハウスが邪魔しないので最適なペダル配置ができるメリットがあると説明されている。

エンジンルームの内側には、まるで人工衛星のような遮熱用の金箔が貼られ、排気系にはインコネル合金を、ボディ外板や構造材にはCFRPを採用するなど、コストを惜しまずに徹底した軽量化が図られ、車両重量は1140kgを実現した。1億円ものプライスタグが付けられたのも、納得できるハイパフォーマンスマシンだった。

マクラーレン F1はモータースポーツでも活躍し、1995年のル・マン24時間レースでは総合優勝を果たしている。しかも、上位5台のうち4台を占めていた。

画像: スタイリングはコンベンショナルなレーシング プロトタイプ風だが、中身はハイテクの塊だった。

スタイリングはコンベンショナルなレーシング プロトタイプ風だが、中身はハイテクの塊だった。

マクラーレン F1 主要諸元

●全長×全幅×全高:4290×1820×1140mm
●ホイールベース:2720mm
●車両重量:1140kg
●エンジン種類:60度V12 DOHC
●総排気量:6064cc
●最高出力:627ps/7400rpm
●最大トルク:69.3kgm/4000-7000rpm
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・90L
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前235/45ZR17、後315/45ZR17

画像: amzn.to
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