さまざまな趣味の相棒となる車を探すと、1ナンバーが装着される普通貨物自動車の存在が浮かび上がってくることがある。その中でも最近、気になるのがこの2モデルだ。果たしてグラディエーターとデュカトには、どんな夢を載せてみることができるのだろうか。(Motor Magazine2023年7月号より)

貨物自動車という新世界。働くクルマから生まれる笑顔

では、1ナンバーを備えた2台の印象はどうだったのか。まずはデュカトからリポートしよう。

画像: デュカトバンの特徴のひとつが、観音開きのリアドアパネル開度が最大270度という点。大きなドアだが頑丈なヒンジを備え、スムーズに開閉できる。片側のみの巨大スライドドアとともに、開閉操作は手動式だ。ちなみに欧州でのデュカトには豊富なバリエーションが用意されており、バン、マキシバン、グレーズドバン(後部サイドウインドウあり)、クルーキャブ、各種トラックなど、驚くほど幅広く展開されている。(フィアット プロフェッショナル デュカト バン L2H2)

デュカトバンの特徴のひとつが、観音開きのリアドアパネル開度が最大270度という点。大きなドアだが頑丈なヒンジを備え、スムーズに開閉できる。片側のみの巨大スライドドアとともに、開閉操作は手動式だ。ちなみに欧州でのデュカトには豊富なバリエーションが用意されており、バン、マキシバン、グレーズドバン(後部サイドウインドウあり)、クルーキャブ、各種トラックなど、驚くほど幅広く展開されている。(フィアット プロフェッショナル デュカト バン L2H2)

小山のように大きなデュカトは着座位置も高く、ヒップポイントは地上からほぼ1.2mの高さにある。したがってドライビングポジションは、まるで中型トラックを運転している時のように背筋をピンと伸ばした姿勢。ハンドルは結構な角度で寝ていて、ペダル操作は足を前に押し出すというよりも、踏み下ろすイメージだ。

もっとも、座っている姿勢がアップライトであるなら、足の動きは前後方向とするよりも上下方向にしたほうが理に適っている。

ところで、上半身で覆いかぶさるようにして水平に近い状態のハンドルを操作する体勢は、私が子供の頃に憧れた「働くクルマ」たちの運転姿勢そのものだ。それだけで何とはなしに笑顔となってしまうのだが、果たしてその気持ち、おわかりいただけるだろうか?

だがそうは言っても、快適性は決して高くない。最高出力180ps、最大トルク450Nmの横置き直列4気筒エンジンは始動時から「ガラガラガラガラ」とディーゼル特有のノイズを響かせるし、加速時にも「キンキン」と響く燃焼音がはっきりと聞こえる。

エンジンの回転フィールも乗用車用と比べれば滑らかとは言えないし、シフトアップごとにハイギアード感が増していく9速ATの設定もあって、高速域での再加速にはそれなりの時間がかかる。とはいえ、高速道路の流れには難なく乗れるので心配は無用だ。要は、先を見越した早め早めの運転操作が必要になる、というだけの話である。

ちなみに日本仕様のデュカトバンは、フロント横置きエンジンの前輪駆動仕様。高速道路の流入ランプなどでは旋回中、遠心力によるアンダーステアが顔を出すかもという心配もあったが、そのような現象は皆無。ハンドルを切れば、きちんと曲がっていく印象だ。また高速道路走行時の直進性もまずまず落ち着いていて、不安や不便を感じさせないものだった。

巨大なデュカトバンの余裕。まさにプロフェッショナル仕様

ただし、空荷だったこともあり、その乗り心地は乗用車のものとは別レベル。硬い設定のスプリングを通して、路面からの突き上げが比較的はっきりと伝わってくる。リジッドアクスルとリーフスプリングからなる簡素なリアサスペンションが、時おりバタついた印象を与えることも否めないが、でも着座するシートの快適性は高い。

画像: 動くリビングルームに変えるのも面白そうだ。(フィアット プロフェッショナル デュカト バン L2H2)

動くリビングルームに変えるのも面白そうだ。(フィアット プロフェッショナル デュカト バン L2H2)

デュカトバンは、キャンピングカーのベース車として想定されていることを考えると、この状態での乗り心地について指摘しても、さほど意味がない。なぜなら、キャンピングカーとして架装された状態ではさらに車重が増えて、足まわりの印象もよりしなやかなものに変わる、と期待できるからだ。

その意味では、今回の試乗は「まだ建設中の家を眺めながら『あんまり居心地が良くなさそうだねえ』とボヤいている」のに近いかもしれない。一方で荷室フロアのサイズが2.96×2.0mと巨大なデュカトバンL2H2は、相当な量の荷物を積める。

今回は、モーターマガジン社二輪誌部門のスタッフに、オートバイの積み込みと固定を試してもらうことができた。「これだけ広いと、うまくやれば5台は積めるんじゃないですか?」とか「荷室の天井が高いので、かがまなくてもバイクを積めるので楽ですね」など、いくつも前向きなコメントがもらえた。

筑波サーキット近くのガレージに自分のハチロク(AE86)を保管して、時おりサーキット走行を楽しんだりもする私にとっても、これだけ荷室が広いデュカトバンは魅力的な存在。もっとも、多少の工具やタイヤを積んでも荷室はガラガラだろう。それなら、キャンピングカーメーカーに相談して荷室を「動くリビングルーム」に変えてもらうのも面白そうだ。

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