現行モデル発表日:2022年11月22日
車両価格:514万2000円〜648万8000円
滑らかな加速感と高い操縦性を生む後輪駆動レイアウト
長年愛された丸っこいビートルから次はゴルフね!と言われた時、世界中のフォルクスワーゲンファンは何を感じただろうか。
パワートレーンが変わったことよりも「なぜこんなカクカクしたクルマにしてしまったんだ」と思った方が多かったはずだ。しかし、BEVの従来とはまったく異なるパワートレーン構成においては、エンジン時代のパッケージレイアウト用語であるFFやFRなどは、ほとんど意味をなくしている。
なぜなら立方体として嵩張るエンジンの代わりに、三次元サイズにおいて比較的自由度のあるモーター+バッテリーの組み合わせにより、重量配分や空間パッケージの解決策が別次元の方法論へと帰着しているからだ。
つまりデザインの自由度が広がったのだ。そしてそれこそが、BEVの魅力であろう。車体やシャシの電子制御技術が向上した今、ドライブフィーリングや取り回し性を重視して後輪駆動を採用するBEVの多いことは皆さんも先刻承知のことだろう。後輪駆動のID.4をビートル再来的に喜んでもいいが、それは狙ったというよりも、必然の設計であったというべきだ。
ID.4も適切な後輪へのトラクションが滑らかな加速フィールを生み、安定した走行姿勢と比較的アジャイルで意思疎通の図りやすいハンドリングを実現しているという点で、後輪駆動のメリットが存分に生かされている。
アメリカンBEVの喧伝した「爆発的な加速」など歯牙にもかけず、むしろモーターの出したがる莫大な力を上手に抑えこんだ上で、タイヤ性能も十分に使って実用的な駆動力を後輪へと伝えようとしているのだ。
加えて電動モデル専用プラットフォームの利点を生かすことで、従来のエンジン付きFFモデルに比べてもはるかに有効なスペース性をもたらした。確かに車体はゴルフに比べて随分と大きいが、さりとて取り回しに苦労することなどはほとんどなく、そして室内はラージクラス級に広いのだ。
コンパクトSUVに慣れた現代の一般的なユーザーならID.4のサイズ感と実用性の高さを好意的に評価できるに違いない。それでもID.3に一度は乗ってみたいと思うのは、世紀的クルマ好きの性(サガ)というものだろう。(文:西川 淳)
フォルクスワーゲンID.4主要諸元
全長:4585mm
全幅:1850mm
全高:1640mm
ホイールベース:2770mm
モーター種類:交流同期電動機
モーター最高出力:150kW(204ps)/4621-8000rpm
モーター最大トルク:310Nm/0-4621rpm
駆動方式:RWD
駆動用リチウムイオンバッテリー容量:52.0/77.0kWh
一充電航続距離:435/618km
乗車定員:5名
サスペンション形式:前ストラット、後マルチリンク
タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20