アウディのフラッグシップSUVはやはり「Q8」が似合う
アウディ初の量産型BEV「eトロン」がマイナーチェンジを受け、モデル名をQ8 eトロンへと改めた。
外観の変更はリニューアルの域を出ないが、アウディらしく、バッテリーやモーターといったBEVの本質に関わる部分には抜本的な対策が施された。
まず、バッテリー容量は「50」と呼ばれるグレードで71kWhから95kWhへ、「55」では95kWhから114kWhへと、それぞれ34/20%拡大された(いずれもグロス値)。この結果、航続距離は「50」で335kmから424kmへ、「55」では423kmから501kmへと延長されている(いずれもWLTCモード)。
ただし、今回はあくまでもマイナーチェンジなのでバッテリーパックのサイズに変わりはなく、バッテリーセルの化学的組成を見直すとともに、実装密度の向上により容量拡大を実現したという。
このうち実装密度に関しては、従来型も新型も角形のパウチ式であることに変わりないものの、問題はパウチ内のセルのレイアウト。従来はグルグル巻きにした1枚のセルを角形パウチに収めるため、厚み方向にぎゅっと押しつぶしたようなカタチとしていたが、新型では長いセルを何度も折りたたむようにして、パウチに収納した。
このレイアウトをスタッキングテクノロジーと呼ぶそうだが、グルグル巻き方式ではパウチ内の四隅にすき間ができてしまうのに対し、何度も折り返すスタッキングテクノロジーではこのすき間を最小化できるために、バッテリーパック全体としてのエネルギー密度を向上できたという。
大容量バッテリーでも満充電はおおよそ1時間以内
もうひとつの重要な改良ポイントは急速充電の容量拡大。従来型では50kWまでの急速充電にしか対応していなかったが、新型ではこれが150kWに引き上げられた。
アウディは同じフォルクスワーゲングループのポルシェやフォルクスワーゲンと共同でプレミアム チャージング アライアンスを構築しており、90〜150kWの高出力急速充電器の整備を急いでいる。
今回の充電容量拡大はこれに対応したものだが、150kWを理想的な条件で用いればバッテリー容量114kWh(正味容量は106kWh)のQ8 eトロン 55でも1時間以内に満充電にできることになる。従来型は、その3倍時間がかかってもおかしくなかったので、これは長足の進歩といえるだろう。
さらに新型ではステアリングレシオをより速めるとともにフロントアクスルのサスペンションベアリングの剛性を向上させることなどで、より俊敏でダイレクトなフィーリングを手に入れたと説明されている。
ボディタイプはSUVとスポーツバックの2種類があり、SUVには「50」と「55」が、そしてスポーツバックには「55」のみがラインナップされる。