マツダが2023年11月に発売した新たな電動車「MX-30 ロータリーEV」は、11年ぶりのロータリーエンジン搭載車で、シリーズハイブリッド車で、PHEVで、と多くのトピックスを持つモデルだ。そして、マツダの電動化戦略で大きな役割を担っていることが見えてくる。

カーボンニュートラル実現目標である2050年に主流のエネルギーは?

CO2排出量削減やエネルギーの効率的使用など、地球環境の改善を目的にした活動は世界的に広まり、自動車業界においても搭載するパワートレーンにまつわる状況は近年、目まぐるしく変化している。

自動車メーカーのいくつかは電動化戦略を発表し、そのなかでラインナップする新車すべてをEV(電気自動車)に転換してEV専業メーカーになることを宣言している。これはボルボやアウディ、ジャガーやベントレーなどの海外ブランドに加えて、レクサス(2035年にEVブランドへ変革)やホンダ(2040年にEV・FCEVの販売比率100%)といった国産車ブランドも同様の方針を表明し、ラインナップのEV化は着実に進んでいる。

この方向性を決定づけたように見えたのが、EUの主要機関である欧州委員会が2021年7月に示した「ゼロエミッション車法案(ZEV法案)」だ。2035年以降に乗用のエンジン車(ハイブリッド車を含む、内燃機関を搭載したクルマ)の販売を全面的に禁止し、新車販売はEVもしくはFCEV(燃料電池車)にするというかなりセンセーショナルな法案だった。しかし、これはEUによる採決を前にして合成燃料を使用するという条件付きで、エンジン車の販売を認める方針に転換した。

EU基準の合成燃料(e-fuel)は製造工程においてさまざまな条件を付したものだが、一般的には水素とCO2を使用した燃料のこと。燃焼時にCO2を排出するものの、製造工程でCO2を原料にしているため実質カーボンニュートラルを実現できるというものだ。

製造方法によってはガソリンだけでなく軽油や灯油、重油やジェット燃料などにつくり分けできるうえに、市中を走る現存車の燃料として使うことでクルマ社会全体のCO2削減に寄与するメリットもある。ただし現時点では製造コストが高く、市販・普及に向けて課題が多く存在するのも事実だ。

画像: マツダは2023年シーズンのスーパー耐久で、軽油代替燃料HVOを日本のユーグレナ社とフィンランドのネステ社から供給を受けて参戦した。

マツダは2023年シーズンのスーパー耐久で、軽油代替燃料HVOを日本のユーグレナ社とフィンランドのネステ社から供給を受けて参戦した。

一方でディーゼルエンジンの燃料として、植物由来のHVO「Hydrotreated Vegetable
Oil(水素化植物油)」はすでに北欧を中心に普及が進んでいるとともに、日本においてもマツダがモータースポーツの舞台、スーパー耐久シリーズのST-Qクラスで実用に向けての実験を行っている。原料となる植物が生育過程で光合成によってCO2を酸素に分解するため、実質カーボンニュートラルな燃料として、また軽油代替燃料として知られている。

このほかにも、水素を燃料とした水素エンジンや燃料電池など、次世代パワートレーン開発は多面的に展開されている。ガソリンや軽油に代わる次世代エネルギーは電気なのか水素なのか合成燃料なのか、候補が多く登場しているものの、カーボンニュートラル実現の目標である2050年までに至る段階で、果たしてどれが主流となっているのか確信を持っている人は多くないはずだ。

そんな中でマツダが発表したMX-30 ロータリーEVは、ロータリーエンジンを発電機として使用したシリーズハイブリッド車であり、観音開きの「フリースタイルドア」を特徴としたコンパクトSUVで、上述した次世代燃料の問題において多くの可能性を持っている。そこで、まずはMX-30
ロータリーEVに試乗した印象をお伝えしていこう。

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