メルセデス〝AMG〟とアウディ〝RS〟、これまで数々の高性能マシーンを提供してきた両ブランド。電動化という時代の流れの中で2台の最新ハイパフォーマンスモデルからジャーマンスポーツモデルのいまを見る。(Motor Magazine 2024年3月号より)

電動化がもたらしたAMGキャラクターの変化

まず試乗したのはC63 S Eパフォーマンス。

スペインの国際試乗会で体験したとおり、従来型に比べると足まわりははるかにしなやかで快適。ゴツゴツ感も明らかに軽くなっている。車内のノイズレベルもはっきりと抑えられていて、私好み。

画像: 走行状況に応じて前後トルク配分を0:100〜50:50の間で連続可変が可能な4マティック+を採用。

走行状況に応じて前後トルク配分を0:100〜50:50の間で連続可変が可能な4マティック+を採用。

なぜ、新型はこれほどまでにスパルタンなイメージが影を潜め、より洗練されたのだろうか? 国際試乗会の会場でインタビューしたメルセデスAMGのドライビングダイナミクス担当者は、私にこんな話を聞かせてくれた。

「ハイブリッドを始めとするさまざまなハイテク装備を搭載できることが決まったとき、それまでのAMGの価値観を大きく改めることを社内で議論しました」

つまり、直4エンジン+ハイブリッドのパワートレーンは、メルセデスAMGのキャラクターまで大きく変革するきっかけになったというのである。

一方で、さまざまな新機軸はAMGらしいスポーティなパフォーマンスの強化にも役立てられていた。たとえば、スロットルレスポンスはハイブリッドシステムを活用することでさらに鋭くなり、それこそアクセルペダルを1mm踏み込んだだけでもグンと前に押し出されるような加速感が味わえる。

ステアリングレスポンスも相変わらずシャープだが、中速コーナーの途中でわざとアクセルペダルを強く踏み込めば、これまでのようにトラクションが失われるのではなく、むしろハンドルを切った方向に強く引っ張られるかのようにして加速していく。

この辺はハイブリッドシステムや4輪操舵、さらにはリアの電子制御式リミテッドスリップデフなどが総動員された結果だろう。

画像: AMGパフォーマンスステアリングホイールを標準で装備。コックピットディスプレイは4つの表示スタイルから選べる。

AMGパフォーマンスステアリングホイールを標準で装備。コックピットディスプレイは4つの表示スタイルから選べる。

しなやかな足まわりが印象的なRS6

続いてRS6に乗り換えると、あれほど感心していたC63 Sよりもさらに足まわりがしなやかなことに気づいて、あ然とした。

画像: 大きなフロントグリルに左右のエアインレット、大きく張り出したブリスターフェンダーで迫力あるスタイリング。

大きなフロントグリルに左右のエアインレット、大きく張り出したブリスターフェンダーで迫力あるスタイリング。

試乗車がエアサスペンション仕様車(C63 Sはメカニカルスプリング仕様のみ)だったせいもあるだろうが、直前まで乗っていたライバルのゴツゴツ感が妙に克明に思い出されて「メルセデスAMGもずいぶん洗練されたと思ったけれど、RS6と比べるとはるかにレーシングカーに近い」と思い直したほどである。

ただし、RS6の足まわりはショックの吸収が巧みなだけに、ハンドルをかすかに切り始めた瞬間の反応はC63 Sには及ばないし、ハードコーナリング時に電子デバイスが介入して積極的にクルマを曲げようとする作用も認められない。RS6はいつでも同じように、切れば切った分だけ素直に曲がってくれる。

しかも、初期応答の鋭敏さがC63 Sに比べてわずかに劣っているだけで、RS6のハンドリングだって相当にスポーティだ。それどころか、ハンドルを操舵する速度によってノーズの向きが変わる勢いが変化するC63 Sと異なり、RS6は反応が一定している点が好ましいともいえる。

画像: RS6アバント パフォーマンスのバーチャルコックピットはRS専用の表示も可能。ヘッドアップディスプレイも搭載する。

RS6アバント パフォーマンスのバーチャルコックピットはRS専用の表示も可能。ヘッドアップディスプレイも搭載する。

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