スタイリングはあまり変わらないが中身は一新
2004年11月に登場した先代となる2代目スイフトは、ハンドリング性能、運動性能、走りのしっかり感、欧州テイストのスポーティなデザインなどが受けて、6年間で国内累計販売台数30万台を超える大ヒットとなった。先々代つまり初代スイフトは軽自動車をベースにしたモデルだったが、先代モデルで劇的な進化を果たして、一躍人気者となったのだった。
スイフトは日本だけでなく、欧州、インド、中国など世界8拠点で生産される世界戦略車であり、先代スイフトはコンパクトカーの本場欧州でも大成功を収めた。むしろ欧州での人気は日本以上で、世界124カ国で累計180万台が販売されたことからも、スイフトがただ単に欧州テイストを持つだけのモデルでないことがわかる。スイフトが属する欧州Bセグメントは、ポロ、プジョー207、ルノールーテシア(クリオ)、MINIといった強豪がひしめく激戦区で、その中でこれだけの実績をあげたのだから本物ということだろう。
そんなスイフトが3代目にフルモデルチェンジしたのだが、2代目からどう進化したのか気になるところだ。
大きな冒険を避けたのか、スタイリングは先代とよく似ている。スイフトらしい要素を残しながらエモーショナルなものに変更したというが、正直、新旧のデザインの違いはわかりにくい。ただ、ホイールベースは40mm伸ばされ、全長も95mm大きくなっていて、プラットフォーム、ボディ、シャシはすべて新設計されているという。
また、ボディがひと回り大きくなったにもかかわらず、高張力鋼板を多用したことで剛性を上げながら車重は軽くなったのもポイントで、FFモデルはすべて1000kgを切っている。スタイリングはあまり変わらなくとも、その内容は一新されたということだ。
エンジンは先代からの進化版となる1.2Lで、今回新たに可変バルブタイミングVVTを排気側にも備えるなどの変更を受けている。大きく変わったのはCVTで、副変速機を内蔵して広い変速比幅を持つJATCO製となった。すでに日産マーチなどにも採用されている新しいCVTだ。もちろん5速MTも設定される。
欧州コンパクトのライバルにとっても大きな脅威になりそう
試乗車はFFのXS、トランスミッションはCVTだった。いずれパワフルなエンジンを搭載する「スイフト スポーツ」が登場するのだろうが、現時点ではもっともスポーティなモデルだ。
走り出してすぐに、その俊足ぶりに驚かされた。アクセルペダルを踏み込むと、パワーがしっかりとついてくるのだ。XSは本来実用的なモデルであるはずなのに、それでも十分にスポーティだ。エンジンを4000rpmも回せば、1.2Lと思えない、たっぷりとしたトルクでぐいぐいと加速していく。
ワインディングを走らせると、そのスポーティさはさらにハッキリしてくる。懐の深いサスペンション、軽量化された高剛性ボディ、可変ギアレシオを持つ電動パワーステアリングがクイックでシャープな走りをもたらしてくれる。
こうなると、パドルシフトのついたCVTが生きてくる。回転が上がった後、少し遅れてトルクがついてくる感じは残るが、パドルシフトで積極的にギアを選ぶとリズミカルな走りを楽しむことができた。燃費だけでなく、走りの良さにもつながるトランスミッションだ。
端的に言って、新型スイフトは先代よりも「さらに欧州車らしくなった」。クルマとしての当たり前の性能をしっかりと作り上げている。とりたててパワフルなエンジンを搭載しているわけではないし、凝ったサスペンションを持つわけでもないのに、しっかりとした走りの質感を実現することに成功しているのだ。これは欧州コンパクトのライバルにとっても大きな脅威となるだろう。
ちなみに、スイフトは世界戦略車であるので、その地域にとって理想的な性能を発揮するように作られる。日本仕様は走りの快適さと燃費性能を重視してCVTが採用されているが、これにより10・15モードで23.0km/Lという良好な燃費をマークしている。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:原田 淳)
スズキ スイフト XS FF主要諸元
●全長×全幅×全高:3850×1695×1510mm
●ホイールベース:2430mm
●車両重量:990kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1242cc
●最高出力:67kW(91ps)/6000rpm
●最大トルク:118Nm(12.0kgm)/4800rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●車両価格:147万5250円(2010年当時)