圧倒的と言える存在感。単なる異端児ではない
実際に走り始めてみると、数々のヘビーデューティな装備や機能が加えられながら、まずは通常のカレラとさほど変わることのない軽やかな動力性能が印象的だ。
歴代911の中にあっても、今まで目にしたことのないリフトアップされた独特のスタンスが目を奪う。1984年のパリダカールラリー優勝車のルックスを再現した「ラリーデザインパッケージ」のオプションは、911シリーズ中でも圧倒的と言える強い存在感を放つ。
しかし、そうした見た目とは裏腹に、前端部にGT3同様のエアアウトレットが設けられたCFRP製フードや同素材による軽量リアスポイラーなど、その車両重量は同じPDK仕様のカレラ4と比べてわずかに10 kg
増でしかない。
さらにシェル全体がやはりCFRP製のフルバケットシートや軽量バッテリー、軽量ガラス等々が採用されたことで、これが前述した軽やかさの演出に繋がっていたことは間違いないだろう。
荒れた路面に差し掛かった際の乗り味は、カレラシリーズに対して明確に硬め。また、ワインディングロードへと差し掛かれば、横Gに対してより早いタイミングでスキール音が耳に届くことも確認できたが、これらはリフトアップによる影響というよりも装着タイヤの特性に起因する、という印象を受けた。
派手なブロックパターンを持つゆえ、目にした瞬間に覚悟したパターンノイズが、思いのほか穏やかで気に障らないものであったのは嬉しい誤算であった。
走りのペースにかかわらず、ロールやピッチング挙動に一切の違和感をもたらさないフットワークのチューニングレベルの高さを見ても、新たな「ファミリー」に加わるに相応しい。
改めてこのモデルが話題獲得のための“異端児”に留まらず、熟成された完成度の持ち主であることを納得させられることとなった。
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究極のストリート仕様で最高のパフォーマンスを追求
そんなダカールに対してある意味、正反対の究極に位置する911と言えそうなのが「レーストラックでの最高のパフォーマンス実現のため妥協を許さずに設計された」とポルシェ自らがそのキャラクターを紹介するGT3 RSだ。
言わばストリートも合法的に走行可能な適合を図った上で生み出されたレーシングモデルということは、見た目を憚(はばか)らず随所に採用されたボディの空力デザインに現れている。
アクチュエーターによるウイング部の可動機構も盛り込まれたスワンネック型の巨大なリアスポイラーを象徴に、フロントフェンダー上のルーバー開口部や前後輪後方のサイドブレードなど、まさに規格外と思える大胆な手法でエアロダイナミクスの改善が試みられている。
大型センターシングルラジエーターにいたっては、ふたつのサイドラジエーターと小型のセンターラジエーターを用いる通常方式と比較してダウンフォースとブレーキ冷却の点でメリットがある、という理由から、フロントのトランクスペースを潰してまで採用されたものだ。
さらに、これまでの“RS”を名乗るモデルの方向性と同じく、驚異的とも言えるレベルの軽量化が図られた。ルーフやフロントリッドなどの大型外板をはじめリアウイング、ホイールアーチベント形状に合わせたドア、シートなど広範な部位にCFRPを活用。標準採用のセンターロック式の軽量鍛造ホイールも、それに貢献している。