2010年9月、三菱パジェロに搭載されるディーゼルエンジンが国内排ガス規制「ポスト新長期規制」に適合する新しいユニットに変更された。従来の「新長期規制」適合車の販売期限が切れるのに伴い投入された。この新しい3.2Lクリーンディーゼルエンジンがもたらした走りはどんなものだったのか。ここでは登場後まもなく行われた国内試乗会のの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年11月号より)

クリーン化のためにさまざまな手が加えられた新ユニット

2008年に発売されたパジェロの“ディーゼル”エンジンはユーロ4に対応した欧州仕様のエンジンをベースに日本の「新長期規制」に適合するように改良したもので、「ポスト新長期規制」には対応していなかった。三菱のエンジニアによると、2008年時点では技術的にポスト新長期への対応が困難だったのだという。しかし、根強い“パジェロディーゼルのファン”の期待に応えるべく、その開発を諦めていたわけではなく、その努力が今回、花開くことになった。

新しいパジェロに積まれた4M41型3.2Lコモンレール式“クリーンディーゼル”エンジンは、圧縮比を17.0から16.0に下げ、シリンダーヘッドの燃焼室形状を変更し、冷却効率を向上させている。さらに、噴射効率を高めるためインジェクターの電磁バルブを高応答化しノズルの憤孔径を小さくして噴霧を微細化。トランスミッションも高トルク対応型とすることで燃費の改善と排出ガス低減を実現している。

こうした数々の改良により、NOX排出量を0.08g/km以下、PM排出量を0.005g/km以下に抑えることに成功。その上で、最高出力は従来比12%アップの190ps、最大トルクは19%アップの441Nm、CO2排出量は6%削減、10・15モード燃費は10.6km/L(エクシードロング、VR-Ⅱショート)に達しているというのが改良型のディーゼルエンジン搭載車だ。

そのラインナップは、ロングボディがスーパーエクシード、エクシード、GRの3モデル、ショートボディがVR-Ⅱの1モデルとなる。

画像: 搭載されるクリーンディーゼルエンジンは新開発と言っていいほどの改良が施されている。これによりエコカー減税の対象となり、新車は自動車取得税および自動車重量税が免税となる。

搭載されるクリーンディーゼルエンジンは新開発と言っていいほどの改良が施されている。これによりエコカー減税の対象となり、新車は自動車取得税および自動車重量税が免税となる。

 

斜度のある坂道もグイグイと力強く登っていく

今回試乗に用意されていたのはロングボディのエクシード、コースはオフロードコースである。そこで対面した“パジェロディーゼル”の外観には大きな変化が見られない。どうやら内外装の変更は最小限にとどめられたようだ。しかし、その内外装とは反対に心臓部には大幅な改良が施されているのは前述のとおりだ。

アイドリング状態の試乗車に乗り込む前、ぐるりと回って音をチェックした。ディーゼルエンジン特有の、あの“ガラガラ”というエンジン音は聞こえるが、それは大きなものではない。つまり気にならないレベルの大きさなのだ。そこにはかつてのディーゼルエンジンが持つ騒音という言葉は似合わない。

静粛性能アップは数字にも表れている。室内に侵入するエンジン音は従来モデル比で、アイドリング時が64.8dBから54.4dBに、100km/h走行時は70.1dBから64.6dBに抑えられた。これはエンジンルーム内やボンネット、各種トリム内に吸音材を追加したことによる効果だという。

試乗はオフロードコースのみだったが、それでもこの新しいディーゼルエンジンのパフォーマンスを伺い知ることができた。それは、かなり斜度のある坂道もアクセルペダルの軽いコントロールだけでグイグイと力強く登っていくことによっても実感できる。

オフロードモデルのパジェロだから4WD性能は当然だとしても、驚いたのは難コースを低回転ですべて難なくクリアしたことだ。試乗中にチェックしていたが、最後まで回転数は2000rpmを上回ることはなかった。ディーゼルエンジンが低回転から豊潤なトルクを生み出すということは理解している。しかし、これほどまでとは……。

ガソリン価格比較サイトによると、9月中旬の都内のレギュラーガソリン1Lの平均価格は128.6円。軽油は109.9円。クルマの価値は燃料代だけで決まるわけではないが、1Lあたり約20円の価格差はありがたい。

現在、旧パジェロなどのディーゼルユーザーは20万人いるという。そうした“ディーゼルファン”にとっては、パジェロの新しいディーゼルエンジンの搭載は朗報だと言えるだろう。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:堀越 剛)

画像: 試乗はさまざまな障害のあるオフロードコースで行われたが、いとも簡単にクリアしてしまった。

試乗はさまざまな障害のあるオフロードコースで行われたが、いとも簡単にクリアしてしまった。

三菱パジェロ エクシード ロングボディ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4900×1875×1870mm 
●ホイールベース:2780mm 
●車両重量:2260kg 
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●排気量:3200cc
●最高出力:140kW(190ps)/3500rpm 
●最大トルク:441Nm(45.0kgm)/2000rpm 
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:476万7000円(2010年当時)

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