大排気量自然吸気エンジンの「素」の魅力を再認識
エンジンを始動した瞬間から、このV8は実に美味しい。とくに派手な演出こそないが、妙に高揚感がかきたてられる。いざ走り出すとV8ならではの奥ゆかしい響きを味わわせてくれる。
クロスプレーンといっても、V8サウンドは昔ながらのドロドロとしたものではなく、重厚でありながら現代的に洗練されている。
いまや大排気量の自然吸気エンジンは世に数えるほどしかないが、自然吸気ならではの素直な出力特性となめらかな吹け上がりが本当に気持ちよい。過給器はなくても、排気量が6.2Lもあり最大トルクが600Nmを超えているのだから、その力強さたるや推して知るべしだ。
また、欧州生まれの高性能をウリとするV8モデルのような、常にはじけるような加速をするわけではなく、本気を出せばかなりの実力の持ち主なのに、ちょっとじらし気味に、もったいぶった回り方をするような印象を受けた。
低〜中回転域では低く太いサウンドを楽しめて、踏み込んでいくと4000rpmあたりからレッドゾーンの6500rpmにかけてはスポーツユニットのような快音を放ちながらよく回る。とても表情豊かなエンジンなのだ。
おかげで高速道路での再加速や追い越しが楽しい。これを味わいたくて、思わずたびたびアクセルペダルを踏み込んでしまった。
ドライブモードの選択で、エンジン特性やATの変速の制御も変わる。アクセルオフ時のバブリングの音も変わるが、公道向けのツーリングモードでも状況によってはパンパンと音をたてる。また、公道では試せないが、ローンチモードがあるのも特徴だ。
一方で、普通に流すと2500rpm以下で10速ATがポンポンとシフトアップしていく。気筒休止システムにより低負荷時は4気筒の稼働となる。だから6.2Lでも思ったほど燃費が悪くないことも印象的だった。
それにしても、GMをはじめアメリカのメーカーは侮れないとあらためて思った。これほどのエンジンと、大トルクに対応する10速のATをさらりと開発するのだから、その底力には恐れ入る思いだ。