ひとつずつ3Dプリンターを使って型をとり、アルミ鋳造
M3/M4のフルモデルチェンジに合わせ、MotorMagazine誌上で「S58B30A型」エンジンが紹介されたのは、2021年6月号でした。新型M2に搭載される同型ユニットも、ややパワーダウンしてはいるものの同じ仕様となります。以下、記事内からその解説を抜粋してみましょう。執筆は、こもだきよし氏です。
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BMW M社はMモデル専用のエンジンを絶え間なく開発している。このMモデル専用エンジンはコードの頭に「S」が付く。通常のBMWのエンジンコードはB(古いのはN)から始まるが、Sから始まるものは一部例外を除いて、存在しない。
エンジンコードの頭文字に関わらずBMWのすべてのエンジンは「TVDI」の要素が入っている。これはターボ、バルブトロニック、ダイレクトインジェクションで、今のBMWエンジンに共通する技術である。
最新型となる6世代目(G80/G82)M3/M4のエンジンは、3L直列6気筒ツインターボを踏襲しており、一見5世代目と大差ないように見えるが、実は中身が大きく変わっている。
シリンダーヘッドの内部を冷却水が巡回するために隅々まで細かい回路が必要になる。それを作るためにひとつずつ3Dプリンターを使って型をとってアルミ鋳造するという丁寧な作業によって成り立っている。
これによりウォーターインジェクターなしでノーマルのM4クーペ(ベースモデル、6速MTのみ)用のS58B30B型は480psと550Nmを発生。さらにM3/M4コンペティション用のS58B30A型は510psと650Nmにパワーアップしている。
さらにS58型から始めた冷却方法は、ピストンを下から冷やすオイルサンプだ。通常は1本の噴射だが、S58型は2本にしたのだ。