Webモーターマガジンが注目してきた映画「フェラーリ」が、2024年7月5日から公開されました。さっそく観てきた編集部スタッフの印象は「これはちょっと想定外」というもの。単なる偉人伝でも成功談でもレースバトルでもありません。エンツォ・フェラーリというひとりの男の生きざまは、さまざまな意味で「手に汗握る」物語なのでした。

圧倒的速さとドラムブレーキの危険なコラボ。レースシーンは本気で「緊張」

さて、そんな重厚かつとげとげした家族関係とともに、この映画のもうひとつの見どころと言えるのが、往年の名車たちが疾走するレースシーンでしょう。

画像2: © 2023 MOTO PICTURES, LLC. STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

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予告編ムービーでもその醍醐味はしっかり感じとってもらえるとは思いますが、先に言っておきます。クルマを運転したことがない人が観ても、この映画のクルマの走行シーンはとても美しく抒情的です。そしてそれ以上に実は、緊張感がみなぎっています。

ミッレミリアを始め、作中で描かれる当時のイタリアのモータースポーツシーンはとてもリアルで、ちょっとしたタイムスリップ的な観光気分が楽しめます。田園風景の中を疾走するシーンは、シンプルに心躍るもの。カメラワークの関係でしょうか。走行シーンに、とっても没入感があるような気がしました。

だからこそ、サーキットでのタイムアタックや本気でライバルとしのぎを削るバトルシーンは、圧倒的な臨場感とともに想像以上の緊張感を伴います。

なにしろ、現代の基準ではずいぶんと細身なタイヤを履いた屋根のないクルマで、ベルトすらまともに締めているのか判然としない状態のまま頼りがいのなさそうなお椀のようなヘルメットをかぶり、お世辞にも路面がばっちり整備されている言えそうにない「サーキット?」を全開で走るのです。

Topic:ミッレミリアを戦った「フェラーリ335S」とは

1957年のミッレミリアでデビューを果たした、フェラーリのニューマシン「335S」は、4023ccの60度V型12気筒DOHC24バルブエンジンを搭載。最高出力は390psを発生していました。スチール製チューブラーフレームのボディを採用した2シータースパイダーの車両重量はわずか880kg。最高速度は300km/hを謳っています。装着されたタイヤサイズは前6.00×16/後7.00×16、幅としてはおよそ170mm(現在のタイヤサイズで言えば165/50R16程度)でした。フロントサスペンションこそダブルウィッシュボーン×コイルスプリングですが、リアはド・ディオンアクセルにリーフスプリングで、しかもブレーキは4輪ドラムということで、現代のイメージからすると明らかにパワーが突出している印象です。

感覚的には、初心者の運転で助手席に座って高速道路をかっとばしている時にもちょっと似ているかも。おかげさまで冒頭の走行シーンから、しっかり手には冷や汗をかいていました。本当に曲がるのか?ちゃんと減速できるのか??もしもなにかあったら大丈夫なのか???お約束のようにさまざまな「フラグ」が立つ中、不安は見事に的中してしまうのでした。

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