「ターボ」が意味するのは「あらゆる意味で最上級」であること
量産車に目を向けてみても、やはり「ターボ」はひとつのアイコンとなっている。御存知のとおり、911シリーズを見れば今やカレラに積まれるエンジンもターボチャージャー付きだが、最高峰に位置づけられているのは、現在もやはり「911ターボ」である。
それどころかタイカンや新型マカンのようなBEVでも、トップレンジには「ターボ」が据えられている。これについて、ターボエンジンを積むわけでもないのに、などと言う向きもあるが、ポルシェにとって「ターボ」とは最上級、あるいは究極を示す言葉なのだ。
そんなポルシェの「ターボ」最初の1台となる911ターボが発表されたのは、1974年10月のパリモーターショーだった。そう、今年はポルシェターボ50周年ということで、ル・マン24時間レースに続いてポルシェは「ポルシェ ターボ50周年」と銘打つワークショップを開催した。
用意されていたのはミュージアムが所有する4台に新型車が2台の計6台の「ターボ」。招待を受けた私を含む各国のジャーナリストが、それらを乗り換えながらゴールを目指し、その歴史や意義を振り返ったのだ。
最初にキーを受け取ったのは、まさにその最初の1台、ポルシェ911ターボ。水平対向6気筒の空冷エンジンは、排気量をベース車の2.7Lから3Lへと拡大した上でターボチャージャーを装着することで、最高出力260psを発生し、最高速度は250km/h以上を達成していた。
ちなみに当時の911カレラは2.7L自然吸気エンジンを積み最高出力は210ps、最高速度は240km/hという時代である。
1975年式の試乗車は走行14万km超ながら、かなりのレア
話題を集めたのはそのパフォーマンスだけではない。
911ターボは前205/後225という当時としては極太のタイヤを履かせるべく前後フェンダーが拡大され、全幅は約12 cmもワイドに。そして車体後部にはホエールテールとも形容された大型スポイラーが備わり、ルックスもきわめて刺激的に仕立てられていた。内装もレザーを奢った豪華な仕立てで、まさにラインナップの最高峰に相応しい存在感を発揮していたのだ。
1975年式の試乗車は走行14万km超で内外装の程度はそこそこ。しかし最初の生産ロットの内の1台という希少な個体だった。
初めて乗ったターボ3.0は、確かにターボラグが強烈だった。排気量があるので低回転域でも走れなくはないが、レスポンスは緩慢。アクセルを全開にして3000rpm回転に到達しても、いや4000rpmでも、まだ反応は鈍いままだ。
ところがそこを越えたあたりから急激にトルクが盛り上がり、レスポンスが鋭くなる。オッと思ったら、あとは一気にトップエンドまで炸裂するのである。額面上のパワーは今や大したことなくても、この加速は超刺激的。やみつきになるとは、このことである。
マニュアルトランスミッションは4速で、タイトな山道は苦手というイメージがあった。だがポルシェシンクロは効きが強力で、1速まで遠慮なく使うことができたし、加速の息が長い分、エンジンの鼓動を存分に味わえた。
サスペンションはしなやかで、トラクションも不満なし。飛ばせば前が浮き上がる感じもあるが、それも今となっては味と言えるもので、心から楽しめた。とは言え、きっと1975年にこの走りの印象は強烈すぎるほどだったに違いない、と思いを巡らせたのだった。