ジャーマンプレミアムのセグメントを牽引してきたメルセデス・ベンツのEクラスとBMWの5シリーズ。中でもそれぞれのワゴンモデルは各ブランドの個性際立つ存在として今なお注目を集めている。そんな本特集のメインに相応しい2台を連れて彼らの妙味を感じてきた。(MotorMagazine 2024年10月号より再構成/文:島下泰久/写真:永元秀和)

これぞEクラスというふんわり感を堪能できる

E300ワゴンのエンジンは、2L直4ガソリンターボエンジンで最高出力258ps、最大トルク400Nmを発生し、これにさらにISG(インテグレーテッド スターター ジェネレーター)の17 ps、205Nmが加わる。

画像: E300が搭載する2L直4ターボは最高出力258ps、最大トルク400Nmのパワーを発生。

E300が搭載する2L直4ターボは最高出力258ps、最大トルク400Nmのパワーを発生。

ちなみに523dツーリングにもマイルドハイブリッドシステムが備わるが、こちらは7ps、25Nmというスペックに留まる。

9速ATのメリット、吹け上がりの軽やかさもあり、走りっぷりはより力強くスポーティだ。エンジン音はこちらもよく抑えられていて、まるで自分から遠い位置に積まれているかのように思える。

エアマティックサスペンションを備えるシャシは、これぞEクラスという印象のふんわり感を堪能させてくれる。

比較的低速で路面の継ぎ目を通過する時などには思いのほかガツンと強めの入力があり、質の低い振動を伴うこともあるのは事実だが、速度が上がってくると、そのストローク感は絶妙。思わずペースが上がってしまい、そしてもっと遠くに行きたくなる乗り味と言える。

ワゴンだからこそ「無難」に妥協はしたくない

2台をじっくり乗り較べての率直な印象として、今回とくに印象的だったのは523dツーリングの走りである。中でもその静粛性、骨太感は見事なものだ。

画像: 5シリーズは後席の快適性重視、Eクラスは積載性こそ大事という考え方。「こだわり」を知ることが、愛車と過ごす時間の「最適化」につながるはず。

5シリーズは後席の快適性重視、Eクラスは積載性こそ大事という考え方。「こだわり」を知ることが、愛車と過ごす時間の「最適化」につながるはず。

しかしながら速度を上げた時のE300ワゴンのクルーザーにでも乗っているかのような気持ち良さも捨て難い。もしもこの2台で悩みはじめたら、ちょっと困ったことになりそうだなと、嬉しくも悩ましい気持ちになった。

走りだけの話ではない。デザインやパッケージング、使い勝手や運転支援装備の考え方なども、両車の違いは想像以上に大きい。結局のところ、それは優劣ではなくスタイルの違いという話になる。

冒頭で改めてワゴンを選ぶ価値について書いたが、ワゴンにはスタイルのあるクルマを求める、要するに無難な選択などしたくないという人を導く何かが宿っている。

とくにドイツ生まれのモデルたちは、カチッとした作り込みと練りに練られた実用性で、そんなワゴンならではの世界に存分に浸らせてくれるはず。

いずれも強く主張する、まさに譲れないスタイルを持つ最新のプレミアムワゴン2台に触れて、改めてそんな風に思わされたのである。

画像: 評価を担当した自動車評論家 島下氏は、「E300もすごく良いけれど、今選ぶなら523d」と語る。

評価を担当した自動車評論家 島下氏は、「E300もすごく良いけれど、今選ぶなら523d」と語る。

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