当代のBMWらしい走りは総合力で語るべきものである
新型X3のドライブフィールは前型のそれに比べると、乗り心地面のみならず音・振動面での快適性がきっちり底上げされた点が際立っている印象だ。とくに構造的に優位な直6を積むM50の静粛性は驚きに値するもので、低中速域での透過音はBEVと比べても遜色ない水準である。
一方で、ちょっと気になったのはそのB58系の直6エンジンが400psに迫る出力ながらも、その回転フィールがトップエンドに向けて少し重い印象だったことだ。欧州域での騒音や環境規制が厳しくなる中、BMWといえども気持ちいいエンジンづくりに苦慮しているという一面はあるのだろうか。
そういえば、前述した新型1シリーズのMパフォーマンス銘柄であるM135に搭載されたB48系4気筒エンジンは、回転フィールや音質に遜色はないものの、ピークパワーはわずかながら前型から後退している。
これについてBMWでミドルからラグジュアリークラスの開発担当ゼネラルマネージャーを務めるニコライ・マーティン氏に話を聞いてみたところ、「内燃機の規制が厳しくなっていることは事実だが、数値的上下はもとよりパワートレーンの種別にもかかわらず、全体観として我々の目指すドライビングプレジャーを高め続けていくことにまったく変わりはない」ということだった。言い換えればBEVやFCEVも範疇とする時代のBMWらしい走りとは、動力源に強く依存するものではなく、シャシの味付けも含めた総合力で語るべきものへと移行していく、そのように窺えた。
関連して訊ねてみたのは欧州の自動車開発に甚大な影響を及ぼすだろうユーロ7への対応だ。これについてマーティン氏は、彼の担当域である「ロールスロイスが搭載する12気筒ユニットは、すでにユーロ7への対応まで目処がついている」としたうえで、「パワートレーン外の要素となるブレーキダストへの対応として集塵計測機器の導入などをすでに開始している」と教えてくれた。
ユーロ7の現実味については業界内で懐疑的な見方も多いが、BMWは対応に向けて着実に歩を重ねているようだ。
マーティン氏による話を振り返るに、BMWの走りのデザインはいま、時代の変化を受けての新たな模索の時を迎えているのかもしれない。