おいしい領域を拡げたら、いろいろと気持ち良くなる
今回のワークショップもさまざまな新情報がてんこ盛りでしたが、ホンダの内燃機関に対する愛情がひときわわかりやすく伝わってきたのが、新規開発中の1.5Lと2.0Lの直列4気筒ユニットの革新ぶりでした。直噴アトキンソンサイクルの高効率化とともに、フロントドライブユニットおよび統合冷却システムを刷新、従来比で10%以上の燃費向上を目指しているといいます。
全領域における理論空燃比の実現で、出力性能の向上と低燃費を両立・・・と説明してもなかなか難しいのですが、あえて整理して解説するとするなら、新しいホンダのエンジン群の魅力は次の3点ほどに集約されるような気がします。
ひとつは、「Honda S+Shift」に関わるもの。エンジンが高い効率を発揮できる「おいしい領域」を拡げて、そのゆとり分をシフトコントロールの最適化、高効率化に活かすことで生まれるダイレクトな駆動とシフトの実現です。
新開発の1.5Lユニットでは現行比で約40%、2Lユニットでも約30%、高効率領域が拡大されています。結果として、あらゆるシーンでの瞬発力が大幅に向上することになるでしょう。さらに高レスポンスの発電モーターによって変速をアシストすることで、ステップシフトのリズムが格段に気持ち良くなる可能性を秘めています。
ふたつめは、ドライブユニットの高効率化とパッケージングそのものの小型化がもたらす恩恵です。急速燃焼の採用とNVが改善されているエンジン本体はもとより、エンジン直結のトランスミッション(1.5L用は1軸、2L用は2軸)は非常にコンパクトにまとめられながらも、フリクションを低減、伝達効率も改善されています。
効率向上の要と言える電動系に関しても、着実な改善が見込まれます。たとえば2016年からホンダが世界に先駆けて取り組んできた重希土類(レアアース)フリーの電気モーターは、独自開発の新形状によって10%もサイズダウン。意外に嵩張るPCU(パワーコントロールユニット)は、リア駆動用モーターのインバーターまで内蔵しながら配線の工夫で小型化を徹底し、きっちりフロント部にまとめられています。
パッケージングという面では、バッテリーパックの小型高出力化も重要なポイント。全高、全長ともに最小サイズ化されながら、剛性パーツとしての機能も兼ね備えています。後席下に配置されたことで、居住性、積載性を損なうことなく快適で使いやすいユーティリティを実現しました。部品の共用化によるコストダウンも、図られているそうです。