走り出して驚いた静粛性の高さとスポーティな走り
セレナ オーテック スポーツスペックの開発コンセプトは「蒼海の息吹をまとった 堂々クルージングミニバン」。気持ちよく走れて、ロングクルーズもこなせるワンランク上のミニバンを目指したといいます。
走り出して思ったのは車内が静かだということです。試乗会場は神奈川県横須賀市にある日産のテストコース「GRANDRIVE (グランドライブ)」で、路面の状態は一般道よりも良いのですが、標準装着されるタイヤはミシュラン パイロットスポーツ5(サイズは215/55ZR17)というスポーツ志向の銘柄です。
開発陣の説明によるとこのタイヤを履くことによって懸念される騒音への対策として、フロントガラスは標準車にも用いられている遮音性が高いガラスを、前席サイドウインドウにはセレナの最上級グレードである「LUXION(ルキシオン)」に装備されている遮音ガラスを採用して静粛性を高めたといいます。その効果が表れているようです。
コーナーでは適度にロールはするのですが、決して怖さを感じるようなロールの大きさではありません。また高速走行セクションでは約100㎞/hでレーンチェンジを繰り返してみてもクルマの挙動の乱れは少なく揺れもすぐに収束。車両の直進性が高まっていると感じました。乗員の頭の揺れが少なく、これであれば家族を乗せても車酔いを訴えることはないだろうと思いました。
この落ち着いた走りは、車体にクロスバーとパフォーマンスダンパーを追加してボディとシャシを強化し、同時に足まわりを専用チューニングとしたこと、電動パワーステアリングのセッティングを重めにしたことなどによりもたらされる恩恵なのです。このパフォーマンスダンパーは、さまざまな硬さの10数本を用意しその中から最適なモノを選んだといいます。また、取り付け位置も試行錯誤を繰り返して決定したそうです。
ちなみに、セレナ スポーツスペックのボディにはスポット溶接の打ち増しなどの強化は施されていません。これについて開発者に訪ねたところ、現行型(C28型)の標準車は先代(C27型)よりもスポット溶接の箇所は増やされていて、ボディについてはこれ以上の打ち増しなどによる剛性アップは必要なかった、とのことでした。
また、走行モードはセレナ スポーツスペック専用のチューンとなっています。アクセルレスポンスは標準車と比べると「Eco」モードはほぼ同じ、「Standard」モードは標準車の「Sport」よりも少し緩やかに、「Sport」モードは標準車よりも機敏に反応するセッティングに変更されています。
この効果はてきめんで、「Standard」モードでは標準よりも明らかに加速が鋭く、60km/hに達するまでの時間も短く感じました。「Sport」モードではアクセルペダルを踏んだ瞬間に「ガンッ」と加速していく印象です。低速域での反応はちょっとナーバスですが、中速域での微妙なスピードコントロールはしやすいと感じました。とくにカメラカーと並走しての撮影時に速度を細かく調整するシーンではとくにこれを実感しました。