ドライビングモードでレスポンスが大きく変化
アベンジャーと同じ場所に位置するシフトスイッチでDポジションを選択し、さっそく試乗を始めることにした。270Nmのトルクは、この600eにおいても必要にして十分な性能。アベンジャーが6種類のドライビングモードを持つのに対して、600eでは「エコ」、「ノーマル」、「スポーツ」の3種類のみが設定されるが、エコをチョイスしてもその加速にダルな印象はなく、ノーマル、スポーツとモードを変化させていくと、明らかにアクセルレスポンスが鋭くなっていくのがわかる。
とくに魅力的なのはスポーツモードを選択した時の俊敏な動きだ。そのハンドリングはいかにもイタリアンコンパクトカーといったフィーリングで、いくつかのコーナーをクリアしていくと、いつしか積極的にコーナーを攻めたくなる衝動にさえかられてしまう。
回生ブレーキのフィーリングはアベンジャーとよく似ている。Dレンジではほとんどそれを感じさせないものだし、Bレンジを選択しても違和感を抱くほど強力に回生ブレーキが働いているという印象はない。あくまでもナチュラルに働くのだ。ちなみに完全停止を可能とするワンペダル制御は、アベンジャーにもこの600eにも採用されておらず、停止する時には最後はきちんと自分でブレーキペダルを踏む必要がある。
アベンジャーとの走りの中でのもっとも大きな違いは、その柔らかな乗り心地にあった。600eにはアベンジャーと同ブランドの、しかしながら215/55R18とワンサイズ大きなタイヤが装着されていたのだが、それでも低速域での突き上げなどは600eの方がより巧みに処理されていた印象が強かった。このあたりは、やはりオフロード走行を含め、よりスポーツ性を強く主張するジープブランドとの差別化が強く表れている部分なのだろう。同時にそれは、それぞれのブランドの独自性を何よりも尊重するという、ステランティスという巨大グループの持つ基本的な哲学に他ならない。
ジープアベンジャーとフィアット600e。今回はステランティスの兄弟車ともいえる最新BセグメントのBEVを同時に試乗した。実際に試乗を終えて安堵したのは、いずれのモデルからも各々のブランド性というものがダイレクトに感じられたこと。そしてどちらのモデルにも、ほかのブランドから新たなカスタマーを迎え入れることができる魅力が、確かに備わっていたということだった。
アベンジャーは自分にとって、ベストマッチする一台だった
本来ならば、このような場で書くべきことではないのかもしれないが、私自身は試乗を終えてアベンジャーが本当に欲しくなった。
ジープという伝統のブランドに誕生した新しいサイズ、そしてBEVであるアベンジャー。25年には本命ともいえるPHEV版が上陸する可能性も高いというが、それも含めてアベンジャーにはより大きな期待を抱いている。自分のライフスタイルにも、そして何よりテイストにも、まさにベストマッチする一台だと感じたからだ。
ステランティスの電動化戦略。その中期的な最終目標は、30年までにLEV(低排出車)の販売構成比率をヨーロッパで7割以上、アメリカで4割以上とすることにあるという。これはヨーロッパにおいては業界の見通しを10ポイントも上回る高い目標だが、決して実現不可能な数字ではないだろう。それが確信できた試乗だった。
【ジープアベンジャーアルティテュード 主要諸元】
●Motor 型式:ZK02 種類:交流同期電動機 最高出力:115kW(156ps)/4070-7500rpm 最大トルク:270Nm(27.5kgm)/500-4060rpm ●Battery駆動用電池 種類:リチウムイオン 総電圧:375V 総電力量:54.06kWh●Performance 一充電走行距離:486km 交流電力量消費率:127Wh/km ●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:4105×1775×1595mm ホイールベース:2560mm トレッド前/後:1540/1530mm 最低地上高:200mm 車両重量:1570kg 乗車定員:5名最小回転半径5.3m ラゲッジルーム容量:355/1053L ●Chassis 駆動方式:FWD ステアリング形式:ラック&ピニオン サスペンション形式:前ストラット/後トーションビーム ブレーキ:前Vディスク/後ディスク タイヤサイズ:215/60R17 ●Price車両価格:5,800,000円
【フィアット600e(セイチェントイー)ラプリマ 主要諸元】
●Motor 型式:ZK02 種類:交流同期電動機 最高出力:115kW(156ps)/4070-7500rpm 最大トルク:270Nm(27.5kgm)/500-4060rpm ●Battery 駆動用電池種類:リチウムイオン 総電圧:375V 総電力量:54.06kWh ●Performance 一充電走行距離:493km 交流電力量消費率:126Wh/km ●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:4200×1780×1595mm ホイールベース:2560mm トレッド 前/後:1535/1525mm 最低地上高:200mm 車両重量:1580kg 乗車定員:5名 最小回転半径5.3m ラゲッジルーム容量:360/1231L ●Chassis 駆動方式:FWD ステアリング形式:ラック&ピニオン サスペンション形式:前 ストラット/後トーションビーム ブレーキ:前Vディスク/後ディスク タイヤサイズ:215/55R18 ●Price車両価格:5,850,000円