街中を彩るビビッドな存在・・・カテゴライズするなら「ファッショナブルSUV」という感じだろうか。どちらも、ブランドアイコニックなデザインは継承しながら、時代の要求に対して見事に応えた“小粋な”モデルたちである。驚くべきは、両車がシャシなどを共有する“兄弟”であること。もっとも、その根底に流れるスピリットは、少しばかり異なっているようだ。(文:山崎元裕/写真:永元秀和 MotorMagazine 2024年12月号より)

ベスト・イン・クラスとなるBEVを全カテゴリーで展開

2021年7月、クライスラーやフィアット、プジョー、シトロエンなどに代表される、全14ブランドをグループに収めるステランティスは、同社の中期的な電動化戦略に関しての発表を行った。

画像: 電気でも、小さくても、それぞれのブランドが持つ「世界観」を十二分に体現している。

電気でも、小さくても、それぞれのブランドが持つ「世界観」を十二分に体現している。

今後5年間で、電動化に対して300億ユーロもの投資を行い、BEV用に「STLAスモール」、「STLAミディアム」、「STLAラージ」、「STLAフレーム」という4種類のプラットフォームを設定。同時にいずれもコンパクトで、かつ柔軟性と拡張性にも優れる3タイプのEDM(エレクトリックドライブモジュール)を開発し、これに高密度バッテリーを組み合わせることによって、効率性、航続距離、充電スピードのいずれをとってもベスト・イン・クラスとなるBEVを全ブランド、そして全セグメントにおいて提供していくというのが、当時発表されたその電動化戦略の骨子だった。

今回紹介する「フィアット600e」と「ジープアベンジャー」の両車も、このステランティスの積極的、かつスケールメリットを最大限に生かしたBEV戦略によって誕生したモデルであり、いずれもヨーロッパや日本では高い需要が見込まれるBセグメントに属するSUVである。

プラットフォームはもちろん両車ともに共通で、運転席下と後席下にセパレートして搭載されるバッテリーの容量も54・06kWhと同一。前輪を駆動するエレクトリックモーターの最高出力、最大トルクも、それぞれ156ps、270Nmと変わらない。基本設計を共通するモデルでありつつも、それぞれのブランドのテイストをいかに巧みに主張しているのか。ユーザーサイドの興味はここにあるはずだ。

伝統を受け継ぐ一方で、都会派の洗練さも感じる

そのような事情を知ったうえで、まずハンドルを握ったのはジープアベンジャーだった。

画像: 写真のような小さい駐車場や狭い林道などもアベンジャーのサイズなら安心してドライブできる。

写真のような小さい駐車場や狭い林道などもアベンジャーのサイズなら安心してドライブできる。

全長4105×全幅1775×全高1595mmというスリーサイズは、ワンサイズ上のレネゲードと比較すると、全長ではさらに150mmも短い設定。デザインは伝統のセブンスロットグリルを始め、ジープブランドの伝統やタフネスさを受け継ぐ一方、都会派SUVとしての洗練さをも強く感じさせる。

ジープブランドのモデルだけのことはあり、もちろん走破性への備えも十分だ。短い前後のオーバーハングからも想像できるように、アプローチアングルは20度を、ランプブレークアングルとデパーチャーアングルは、それぞれ20度、32度を確保。最低地上高も200mmが与えられているため、オフロードでもそれなりに大きな行動範囲が得られるのは嬉しい。

ドライバーズシートに身を委ねてみて、瞬時に感じるのはその自然なポジションだ。これは例のBEV専用プラットフォームの設計によるもので、前述のようにバッテリーをシート下に配置することで、フロア面を低くできるようになった結果の美点ともいえる。

後席まわりのスペースもBセグメント車としては満足できるレベル。さすがに3人乗車の場合だと横方向には窮屈な印象は拭えないが、頭上のスペースには十分な余裕が残っている。これもスクエア基調のパッケージングの恩恵だ。

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