2025年1月10日、東京オートサロン2025で、スバルSTI(スバルテクニカインターナショナル)がコンプリートカー「S210」プロトタイプを公開して話題を呼んでいる。2019年に発表された北米市場向けの「S209」以来、STIのフルコンプリートカー「Sシリーズ」の登場は実に6年ぶり。WRCやニュルブルクリンク24時間レースなどモータースポーツ参戦で培ってきた技術や知見を投入してコンプリートカー「Sシリーズ」はどのように進化してきたのか。今回の特集では2004年に登場した「S203」から、インプレッサ/WRXをベースとした「Sシリーズ」を中心に振り返ってみよう。
S203:2004年(555台限定 車両価格:460万9500円)
スバルのモータースポーツ統括会社であるSTIは、WRCやニュルブルクリンク24時間レースなどモータースポーツ参戦で培ってきた技術や知見を投入してコンプリートカーを開発しているが、エンジン、足まわりはもとよりエアロパーツまでを手掛け、コンプリートカーのシリーズの頂点に位置するのが「Sシリーズ」だ。
その元祖となったのは、1998年に登場した「インプレッサ22B STI version」。WRCで3連覇を達成した「インプレッサワールドラリーカー97」をイメージし、前後フェンダーを大きく張り出させたワイドボディを備え、WRカーのロードモデルとして400台限定。500万円で発売された。
その後、2000年にGC8インプレッサをベースにオンロードスポーツを追求した「S201」、2002年に2代目インプレッサGDをベースとした「S202」を発表。パワーアップされたエンジン、クイックレシオのパワステ、車高調サス、フルピロリンク、チタンマフラー、エアロバンパーに大型ウイングを装備し、メーカーが手掛けたチューニングカーとして人気を博した。
「グローバルピュアスポーツセダン」として大きく進化
そして大きく進化して登場したのが2004年の「S203」だった。それまではSTIが独自にインプレッサをコンプリートカーとして仕上げていたが、「S203」からはスバル本社と一体となって開発するようになり大きく変わった。
ベースは2代目WRX STiで、欧州プレミアムスポーツと競合できる性能を目指して「グローバルピュアスポーツセダン」をコンセプトとして開発。そのためにレガシィベースの「S401」で培った上質感とプレミアム性が持ち込まれたのもポイントだった。
エンジンはビッグタービンのボールベアリングターボや専用ECUで武装され、ピストンとコンロッドは、重量のバラツキを最小限にするため一台ずつの手作業でバランス取りが行われた。
足回りはダンパー、ローダウンスプリングで強化され、ブッシュ各部はピロボール化された。また、プレミアム化の一貫としてインテリアの差別化にも力を入れられ、カーボン シェルのレカロ製リクライニングバケットシートは快適性とホールド性を両立させたものとなった。
その上質な走りはかつてない衝撃的なもので、「S203」の開発にはWRCドライバーズチャンピオンのペター・ソルベルグも加わっていたことも話題となった。
STI S203 主要諸元
●全長×全幅×全高:4415×1740×1410mm
●ホイールベース:2540mm
●重量:1445kg
●エンジン型式・種類:EJ20・対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:320ps/6400rpm
●最大トルク:43.0kgm/4400rpm
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●トランスミッション:6速MT
●サスペンション前/後:ストラット/ストラット
●ブレーキ前/後:Vディスク/Vディスク
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格:460万9500円(2004年当時)