進化の度合いを実体験。より滑らかで快適な走り
袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、新旧アウトランダーの比較試乗もできて、その動力性能やフットワークにおいて、両車の差が小さくないことがよくわかった。
大容量化と高出力化を図った新開発の駆動用バッテリーは、単体での出力が60%、システム総出力も20%も増加しており、これによりEV航続距離が伸長しただけでなく、動力性能も大きく向上している。まずは様子見として大人しく走ると、アクセルペダル操作へのレスポンスが穏やかで、従来よりもギクシャクしなくなっていることがわかった。その点でも進化しているが、走り系モードを選択すると一転して快活になり、明らかに加速時の力強さが増している。
全速力で走るパワーモードよりも、ノーマルモードでの差の方が大きいように感じられた。0→100km/h加速タイムは、従来の10.2秒から8秒以下へと大幅に短縮されているという。速さとともに滑らかさも増しており、電気モーター駆動車らしいシームレスな加速が高速域まで伸びやかに続いていくあたりも進化している。
足まわりの設定については、開発にあたり「電動車ならではの走りを、さまざまな天候や路面において、より安全に安心して楽しめる」ことを意識したという。
それが具体的にどういう意味なのかということは、乗ってみたら合点がいった。ショックの低減、そして車体揺れの減少、さらにしっかり感の向上を目指したと伝えられるとおり、より無駄な動きが減って一体感のある上質な乗り味に仕上がっていることが印象的だった。
しっとりしなやかに路面を捉える感覚と、しっかりとした手応えがあり回頭性の良さを損なうことなく落ち着いた印象もある。より理想に近い走りが実現されていた。
従来型のターマックモードのように面白いようによく曲がる刺激的な走りも個人的には大好物なのだが、より「意のまま」に操ることができてハードウエアとしての完成度が高く、万人向けなのは新型車の方であることは間違いない。
サウンドの進化は聴けば歴然の違い
乗り心地も良くなっている。従来型では20インチホイール&タイヤを履いたことで見映えは良かった半面、足まわりがややキャパシティ不足の印象もあり、バネ下が重たそうな感覚が見受けられた。加えて乗り心地にも硬さが感じられたが、新型ではバタつきが激減してフラット感が増している。縁石や継ぎ目を通過した際の入力、その受け止め方もまるで異なっており、新型の足まわりは引き締まっていながらもよく動き、路面の凹凸をしなやかに受け流してくれる。
おそらく公道を走っても、このサーキットで感じた良さが大きく変わることはないことだろう。4輪がしっかり接地して意のままに操れるというありがたみは、路面の条件が悪くなるほどに実感することができそうに思えた。
前述の「さまざまな天候や路面において、より安全に安心して楽しめる」というのは、まさしくそのことを指しているに違いない。
だからこそ、移動の時間をゆとりをもって楽しむことができる。アテンドしてくれるのは、ヤマハと共同開発された「ダイナミックサウンドヤマハ」。一聴するだけでその音の好ましさを実感できた。
かねてより三菱自動車が得意としてきた電動化技術と四輪制御技術を駆使し、最新のノウハウにより最適な形で実現された新型は、見た目だけでなくその走りにおいても、「威風堂堂」ぶりに一層の磨きがかかったといえるだろう。
【アウトランダーPHEV P エグゼクティブパッケージ(7人乗り)主要諸元】
●Engine 型式:4B12 種類:直4DOHC 総排気量:2359cc ボア×ストローク:88.0×97.0mm 圧縮比:11.7 最高出力: 98kW(133ps)/5000rpm 195Nm(19.9kgm)/4300rpm 燃料・タンク容量:レギュラー・53L
●Motor & Battery 型式:前S91/後YA1 最高出力:前85kW(115ps)/後100kW(136ps) 最大トルク:255Nm(26.0kgm)/後195Nm(19.8kgm) 駆動用電池種類:リチウムイオン 総電力量:22.7km/h WLTCモードハイブリッド燃費:17.2km/L EV走行換算距離(等価EVレンジ):102km
●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:4720×1860×1750mm ホイールベース:2705mm トレッド:前1590/後1595mm 最小回転半径:5.5m 車両重量:2180kg
●Chassis 駆動方式:4WD ステアリング形式:ラック&ピニオン サスペンション形式:前/後
ストラット/マルチリンク ブレーキ:前Vディスク/後Vディスク タイヤサイズ:255/45R20
●Price 車両価格:6,685,800円