2011年6月、ホンダからコンパクトワゴン「フィットシャトル」が登場した。人気モデル「フィット」をベースとした新しいワゴンで、それまで販売されていた「エアウェイブ」の事実上の後継車だった。コンパクトカーならではの経済性の高さを持ちながら、コンパクトカーよりも収納スペースが広く使い勝手に優れることが特徴と謳われたが、市場ではどのように受け入れられたのだろうか。ここでは発表後間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年9月号より)

全長を510mm伸ばし、通常時の荷室容量496Lを確保

今年3月に発表予定だったが、大震災の影響で延期されたフィットシャトル。予定より3カ月遅れた6月16日に発表/発売された。

フィットシャトルは、フィットをベースに全長を510mm伸ばし、通常時の荷室容量496Lを確保したワゴンモデル。リアシートを収納すればスペースは奥行き181cmまで拡大、自転車を縦にも積み込むことが可能だ。ホイールベース自体は2500mmとノーマルフィットと変わらないので、全長の拡大はほぼすべてリアのオーバーハングのストレッチに充てられている。プリウスαのような3列7人乗りの設定はなく、全グレード乗車定員は5名となる。

搭載エンジンは120ps/155Nmを発生する1.5L i-VTECと、今回試乗した1.3L i-VTEC+IMAハイブリッドの2種類。トランスミッションはCVTで、1.5Lエンジンに用意される4WDモデルには5速ATが組み合わされる。

すでに3月からその全貌が明らかになっていたということもあり、初期受注は上々のようだ。発売から2週間で1万2000台と、販売計画となる月4000台ペースの3倍を達成している。販売比率は1.5Lガソリン車が14%、ハイブリッドが86%。購入ユーザーは40歳代以上の子離れ層が約4割を占め、オデッセイやステップワゴンからのダウンサイザーが中心という。

実際にクルマを前にすると、スタイリングに間延び感はなく、ご覧のとおり落ち着いた雰囲気がある。ルーフエンドの絞り込みを抑えてフラットなデザイン処理を施すことで、ノーマルのフィットのアクティブな躍動感とはまた異なった個性を与えることに成功している。

荷室は全長4410mmのCセグメントワゴンとしては圧倒的と言える広さ。1.5Lガソリンモデルにはさらに94Lの床下スペースがあり、可動するセパレータなどで積載する荷物に合わせフレキシブルに対応、ハイブリッドモデルにはない魅力も備えているのが特徴だ。

インテリアはノーマルのフィットハイブリッドと変わるところはない。唯一、バックミラー越しに見えるリアガラスの位置が遠くに映るのが、違いといえば違い。車格的にはフィットよりもひとクラス上に位置づけられるモデルなのだから、もう少し「シャトル」ならではの特別感を演出してもいいのではという気はする。

最廉価グレード「C」以外には標準装備されるテレスコピック&チルトステアリングと、調整幅の広いハイトアジャスターで、ポジションはどんな体格でもしっくりとくるはずだ。

画像: 荷室容量はハイブリッドモデルで通常時496L。広い開口部、スクエアな荷室内部形状で使い勝手にも優れる。

荷室容量はハイブリッドモデルで通常時496L。広い開口部、スクエアな荷室内部形状で使い勝手にも優れる。

画像: 荷室はCセグメントワゴンとしては圧倒的と言える広さ。容量はハイブリッドモデルで最大1092Lまで拡大する。

荷室はCセグメントワゴンとしては圧倒的と言える広さ。容量はハイブリッドモデルで最大1092Lまで拡大する。

改良されたフィットゆずりのしなやかな乗り味

ノブを回してエンジンを始動し走り出す。乗り味は基本的にはノーマルのフィットと変わらない。車両重量が1190kgとフィットよりも70kg重い分、乗り心地が穏やかな感じも受けるが、それでもフィットのキビキビとした軽快さは持っている。思い起こせばフィットの登場時、まだ足の硬さが残り、ようやく昨年10月のマイナーチェンジでその突っ張り感がなくなったが、フィットシャトルはすでに完成されたしなやかな乗り味を持っていて好感触だった。

また徹底したノイズ対策を行うことで、フィット ハイブリッドよりさらに静粛性が向上している。とくに長距離の運転をこなすほど、フィット シャトルならではの上質感を味わえると思う。

前述のように重量はノーマルのフィット ハイブリッドに比べ重いが、10・15モード燃費は30km/Lと同等なのも特筆すべき点だ。これはミシュラン低燃費タイヤ指定採用や各部のフリクション低減などで得られた数字だという。この努力は高く評価したい。

同様の装備グレードで比較するとフィットハイブリッドとフィットシャトルハイブリッドの価格差は約26万円。上質感と広大な荷室が得られることを考えると、これはかなりお得かも。(文:Motor Magazine編集部)

画像: フィットシャトル(左)とフィット。ホイールベースは同じ。フィットシャトルはリアのオーバーハングを伸ばすことでフィットよりも全長が510mm長くなっている。

フィットシャトル(左)とフィット。ホイールベースは同じ。フィットシャトルはリアのオーバーハングを伸ばすことでフィットよりも全長が510mm長くなっている。

ホンダ フィットシャトル ハイブリッド スマートセレクション 主要諸元

●全長×全幅×全高:4410×1695×1540mm 
●ホイールベース:2500mm 
●車両重量:1200kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●排気量:1339cc
●最高出力:65kW(88ps)/5800rpm
●最大トルク:121Nm(12.3kgm)/4500rpm
●モーター最高出力:10kW(14ps)/1500rpm
●モーター最大トルク:78Nm(8.0kgm)/1000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF 
●車両価格(税込み):193万5000円(2011年当時)

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