FRレイアウトという基本コンセプトを初代から受け継いで登場
ベルリンで開催された国際試乗会の会場で、初めて実際に新型1シリーズの姿を見ることができた。すでに写真で確認していたが、実際に触れてみて、ロングノーズ&ショートデッキ、すなわちFR特有のプロポーションを引き継ぎつつ、最新のBMWのデザインコンセプトのもとに開発されているのがよくわかった。
ただ、最新のBMWがほとんどそうであるように、この新型1シリーズも写真映りがあまりよくない。鋭い眼付きの変形六角形のヘッドライトは新鮮だが、キドニーグリル周辺の厚ぼったさがどうも納得がいかなかった。ボディサイドのダイナミックなキャラクターラインや安定感のあるリアエンドは悪くないのだが……。
この印象は、実車を目にしてもあまり変わらなかった。しかし、試乗会でまるまる2日間一緒にいると、「これもありかもしれない」と思うようになってきた。デザインは好みの問題もあるから一概に善し悪しは言えないが、じっくりつきあうほどに味が出てくるデザインと言えるだろう。これはドイツのインダストリアルデザインらしいところでもある
まず、新型1シリーズの概要を確認しておこう。初代から受け継いだFRレイアウトという基本コンセプトは変わっていないが、エフィシェントダイナミクス理念に基づいて、新開発エンジンや8速AT、アイドリングストップシステム、回生ブレーキシステムを採用。パワーアップを図りながら燃費性能も向上させているのが、ひとつめのポイント。
基本コンセプトが変わらないので、ボディサイズは大きく変わっていないが、それでも全長、全幅、ホイールベース、前後トレッドはわずかだが大きくなっていて、後席の足下スペースが21mm拡大され、ラゲッジルームも30L大きくなっている。ボディの拡大により、課題とされた室内空間が改善されているのが、ふたつめのポイントだ。
そして、もうひとつのポイントが、質感の向上だ。初代では「Cセグメントとしてはレベルは高いがBMWとしては素っ気ない」と言われたが、これがどこまで改善されたのかだ。新型1シリーズから、「スポーツライン」と「アーバンライン」と呼ばれる2種類のトリムレベルが用意されているのも、質感向上への施策と無関係ではないだろう。

F20型2代目BMW 1シリーズ。全体のフォルムは変わらないが、ホイールベース、前後トレッドが拡大されたのに伴い、ボディサイズは4324×1765×1421mmと、全長で85mm、全幅で17mm大きくなった。全高は従来と同じ。
息の長い加速を感じさせる118iスポーツライン
試乗車として用意されていたのは、118iスポーツラインと120dアーバンラインの2モデル。まずは118iスポーツラインに乗る。最高出力170ps、最大トルク250Nmを発生する1.6L直噴ターボの4気筒ガソリンエンジンには、6速MTが組み合わされていた。
1.6Lエンジンは1500rpmから最大トルクを発生するが、ベルリン市内の交通をリードして走るには、もう少し回したほうがいい感じ。ただ低回転域からトルクが大きいので、高いギアポジションのまま横着な走りをすることもできる。
アウトバーンに入り、アクセルペダルを踏み込むと、息の長い加速が始まる。この加速感はとても気持ちいいが、耳に入ってくるのはざわついたメカニカルノイズと風切り音ばかりで、直列6気筒エンジンが奏でるようなセクシーなサウンドは聞こえてこない。パフォーマンスではなんの問題もないが、このあたりはなんとかして欲しいところだ。
メーカーのカタログデータでは0→100km/h加速が7.4秒、最高速度は225km/hとなっている。ここで特筆すべきは、EU総合燃費が17.2km/Lと優秀なこと。先代の116iが14.7km/L、2Lエンジンを搭載していた118iが15.2km/Lであったことを考えると(ともにAT仕様のデータ)、燃費の面でも大きく進化したことがわかる。ちなみに、MT、ATともアイドリングストップシステムが装備されている。
アウトバーンを走行していて気に入ったのは、EPS(電気式パワーステアリング)のチューニング。これまでBMWのEPSは、剛性感を出すためなのか全体的に重めで、ダイレクト感にやや欠けるセッティングだったが、最近のモデル、とくにこの新しい1シリーズではとても自然なステアフィールになった。中立付近が実にしっかりとしていて、それでいて切り始めるとスパッと切れる。この感触は素晴らしい。
ステアリングインフォメーションとゲインは確かで、アウトバーンでの高速レーンチェンジも、ワインディングの切り返しでも、理想的な操作性とステアフィールを提供している。

F20型2代目BMW 118iスポーツライン。172ps仕様の1.6L直4ターボを搭載、トランスミッションは6速MTだった。