2025年6月20日、フォルクスワーゲンの新型ミニバン「ID.Buzz」が発表されました。そのプレス発表会終了後、東京・六本木周辺でID.Buzz Pro ロングホイールベースにチョイ乗りする機会を得ました。ここでは、その国内試乗第一報をレポートします。
ID.Buzzというブランドの新たなアイコンを担う存在
2017年にデトロイトモーターショーでコンセプトモデルが発表されたID.Buzz。1950年代に世相に合わせたピープルズカーとして主に北米で大ヒットを記録したタイプ2をオマージュしたコンセプトモデルはこれまでにも幾度か披露されてきましたが、このID.Buzzに限っては、その「本気度」が異なっていたように今振り返ると感じることができます。

2017年3月に公開されたID.Buzzコンセプト。世界初の多目的EVバンとして、そのアイコニックなデザインや最新の運転支援システムを搭載するなど、世界中が期待を寄せたモデルであった。
その所以として、2010年代後半から急速に進み始めたモビリティの電動化が挙げられます。このコンセプトモデルで謳われたのは、電動化と自動運転という当時の考えうる自動車の近未来像を示唆したキーワードであり、当時のフォルクスワーゲンとしても特に電動化という側面に関しては、ジャーマンブランドの王者たる宿命ゆえ、ある種生き急ぐように推し進めていた事項でもありました。
と、そこで必要とされたのは、完全電動化されたモビリティを既存のユーザーに選んでもらえるような「アイコンとなるモデル」の存在でした。世相により求められる電動化モデルの設定を、チャーミングでアイコニックな存在が担うことで「デザインや世界観でそのクルマを選んだら、たまたま電動化されたモデルだった」という市場の電動化スイッチを後押しできるからです。