さすがドイツの作といえる剛性感と、頬がゆるむ楽しい走り
試乗したロングホイールベースモデルの全長は4965mmと、5mに迫る大きな体躯。もっとも、ID.Buzzの全幅は全グレード共通で1985mm(!)と、まさにフルサイズ級のミニバンとなります。とくに大きな全幅は都内のような狭い道路環境における取りまわしで気になるところです。
が、走り始めてから、その意外なほどの運転のしやすさに拍子抜けさせられました。とりわけハンドルを切った時の動きが想像以上にクイックで、キビキビとまではいかないものの、実寸を鑑みると驚くほど動かしやすい印象でした。
一方で少し気になったのは前方の見切り。アップライトに座らせる乗車姿勢なので、視界自体は良好なのですが、フロントボンネットがかなり傾斜していることで、車体の先端を目視することができません。が、日本へ導入されたID.Buzzは全車に「アラウンドビューカメラ Area View」を標準装備しています。そのおかげで、360度の周囲を12.9インチの大型センターディスプレイに表示することができるため、そちらを確認すれば問題ないといった具合でした。
もっとも、タイプ2をオマージュしたデザインということもあり、フロントのオーバーハングは通常のミニバンと比べて短く設定されていたこともあり、前述の不安要素も慣れればすぐに払拭されるだろうと感じました。

リアに駆動用モーターを搭載したRWDモデルであるID.Buzzはタイヤサイズが前235/50R20、後265/45R20と前後異径サイズとなっている。(ショートの場合は前235/55R19、後255/50R19)
とくに、ID.Buzzを一般道路で走らせてみて感じたのは、フォルクスワーゲンらしさ。もっと言えばドイツ車らしい、ガッチリとしたドライブフィールです。ボディの剛性感、ブレーキタッチの節度感など、日本のミニバンとは味付けがまったく異なる雰囲気でした。例えるならば、トヨタアルファードのような柔らかさというよりも、メルセデス・ベンツVクラスのガッチリとした乗車感覚の側に圧倒的な近接さを感じました。
そのガッチリとしたドライブフィールに拍車をかけるように、電気自動車であるID.Buzzの痛快なモータードライブにも驚かされました。280ps/560Nmという強力なアウトプットを有する駆動用モーターは、車体の後輪に設置されます。したがって、後ろから押し出されるような「グイッ」という感覚は、車体の大きさ(車両重量は2720kgもあるのに!)を考慮しても、驚くほどの軽快さです。4つのドライブモードを設定するID.Buzzですが、もっとも緩やかな出力特性にシフトされる「エコ」モードでも十分すぎるほどのパワーフィールであったほどです。