ディーノ 246GT(DINO 246GT:1969〜1974)
純レース用に開発された2LのV6 DOHCエンジン、「ディーノV6」。レース用ということもあり、もともと少量生産エンジンだったが、当時のF2(フォーミュラ2)レーシングカーの規定変更により、1967年から搭載できるエンジンは連続した12カ月に500台以上生産されたものでなければならないとされた。レーシングコンストラクターとしてのフェラーリは、この規定を自社だけではクリアできないと判断し、フィアットと手を組む。

流麗な2座クーペの公称最高速度は235km/h。2340mmのショートホイールベースにより、切れ味良いコーナリングを実現していた。
ディーノV6を搭載したロードカーをエンジンも含めてフィアットに製造してもらうというという画策?からピッコロ(イタリア語で「小さな」の意味)フェラーリ、ディーノ 206GTが誕生する。これは何台かのプロトタイプを経て1968年に販売が開始された。
1969年、206GTの販売開始からわずか9カ月後にディーノは排気量を2.4Lにアップした246GTに切り替わる。フェラーリの総帥エンツォの愛息アルフレードの愛称から名づけられたディーノは、当時「12気筒以外はフェラーリにあらず」ということでフェラーリの車名は与えられなかったというのは本当なのかは、今もなおクルマ好きの間で論議される話題だが、ディーノはフェラーリ製のスポーツカーであることは間違いない。
2本のメインチューブをクロスメンバーでつなぎサブフレームでボディを支持する、当時のフェラーリの手法で構成されたシャシに、5速MTと一体のV6エンジンを横置きミッドシップ搭載する。ボディは206GTよりもホイールベースが60mm延長されたが、ピニンファリーナの手になる美しいボディスタイルは、微塵も破綻することなく継承されている。ただし、206GTでアルミニウム製だったボディはスチール製に替えられている。
2.4LのV6エンジンゆえ、パワースペックは195ps/22.9kgmとスーパーカーと呼べるほどのパフォーマンスは発生してはいない。だが、1トンそこそこの車両重量には十分なパワーで、しかも卓越したハンドリングにより、V6搭載車をフェラーリとは認めないティフォシ(熱狂的ファン)たちを黙らせる完成度を誇った。日本でもスーパーカーブーム時にはロータス ヨーロッパに次ぐ主役級の人気があった。
ディーノ 246GTは生産期間中の改良で、L/M/Eの3シリーズに進化していくが、改良点は細かい部分が多く、外観には大きな変化はない。そうした意味でのハイライトは、1972年に登場した246GTSだろう。デタッチャブルルーフを備え、北米で大人気を博していく。

上質な設えはさすがフェラーリ。シートに収まり、エンジンに火を入れた瞬間からファン to ドライブの世界に誘われる。
ディーノ 246GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4235×1700×1135mm
●ホイールベース:2340mm
●車両重量:1080kg
●エンジン種類:60度V6 DOHC
●総排気量:2419cc
●最高出力:195ps/7600rpm
●最大トルク:22.9kgm/5500rpm
●燃料・タンク容量:有鉛ハイオク・64L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:横置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:205/70VR14