マセラティ メラク(MASERATI MERAK:1972〜1982)
長らく老舗ブランドとして君臨したマセラティは、1960年代後半、経営危機に直面していた。経営陣は、シトロエン SM用のV6 DOHCエンジンの開発を請け負うなど業務提携関係にあったシトロエンに経営陣が株式を売却、1968年にマセラティは同社の傘下となった。

多くのボディバネルをボーラと共有するために、正面からのスタイルも非常によく似たものとなった。
その後、1971年にマセラティ初のミッドシップ市販車となったボーラを発表。挑発的なスタイリングのランボルギーニとは異なり、老舗マセラティならではのシックな大人のスーパーカーと評判を博した。
その勢いを駆ってシトロエンと共同開発されたモデルがメラクだ。車名は、北斗七星が含まれるおおぐま座に属する星のひとつの名に由来しており、マセラティ伝統の「風」シリーズではないことが興味深い。デビューは1972年のパリ モーターショーだった。
モノコックのシャシに多鋼管製のエンジンベッドを組み合わせるという基本骨格はボーラと同じ。パワーユニットは前述のようにマセラティがシトロエンのスポーツクーペ、SMのために開発した、3Lの90度V6 DOHCをミッドに横置き搭載していた。

マセラティがシトロエンに供給していた3LのV6 DOHCを横置きにミッドシップ搭載。3基のウエーバー製キャブレターで190psを発生した。
このエンジンは実質的にはボーラ用のV8から2気筒分をカットしたものだ。それでも、ウエーバー製のツインチョークキャブレターを3基装着して、最高出力は190psを発生した。さらにシート配列はミッドシップながらプラス2のリアシートを備えたのも特徴だった。
デザインは、ボーラに引き続きジウジアーロが担当した。ボディパネルの大半をボーラと共有したこともあって、両車のスタイリングは非常によく似ている。もっとも大きな違いは、斜めの梁を入れて一見ファストバックに見せるボディ後半の処理だ。これにより、後方視界の改善に加え、エンジンフードを露出させたことでエンジンルームの放熱性にも効果を発揮した。
最高速度は225km/hと公称されたが、より高性能を望む声に応え、1975年に圧縮比のアップなどで従来モデルより30psアップした220ps版のエンジンを搭載した「メラク SS」が追加された。メラクの総生産台数は1830台といわれる。

ファストバック風に斜めに渡したピラーがメラクの特徴。これがエンジンルームの放熱に果たした役割が大きい。
マセラティ メラク 主要諸元
●全長×全幅×全高:4335×1770×1135mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1320kg
●エンジン種類:90度V6 DOHC
●総排気量:2965cc
●最高出力:190ps/6000rpm
●最大トルク:26.0kgm/4200rpm
●燃料・タンク容量:有鉛ハイオク・85L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:横置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前185VR15、後205VR15