ロータス エスプリ(LOTUS ESPRIT:1976〜2004)

映画「007」のボンドカーとして登場した際には水陸両用車という位置づけだったが、サイドビューはボート的?にも見える。
ロータス ヨーロッパの後継モデルとして、ロータス カーズが1975年に発表したのがエスプリだ。ロータスの流儀に則って車名は「E」で始まるが、エスプリとはフランス語の「Esprit(英語のSpirit)」に由来している。
1972年のジュネーブ モーターショーで、ジョルジェット・ジウジアーロが率いるイタルデザインは「ブーメラン」というコンセプトカーを発表している。その前からロータスの総帥であるコーリン・チャップマンはジウジアーロにニューモデルのデザインを依頼しており、このブーメランがエスプリのベースとなっている。
エスプリは1975年10月のパリ モーターショーに生産型に近い形で出品され、「エキサイティングで魅力的なイギリスのスポーツカー」と絶賛された。当時のジウジアーロらしいウエッジシェイプのスタイリングが特徴で、ボディパネルにはFRPが多用されていた。シャシはロータス ヨーロッパと同様、バックボーンフレームのリアのY字が広がった部分に、エンジンとトランスミッションをミッドシップ搭載している。
ただ、ヨーロッパの後継モデルとはいえ、エスプリはライトウエイトスポーツではなく、いわゆるスーパースポーツであり、大きな変革といえるものだった。デビュー当初のS1では、最高出力160ps/最大トルク19.4kgmを発生するロータス カーズ製の2L 直4 4バルブDOHCを搭載。トランスミッションは、シトロエンSM用の5速MTトランスアクスルを流用している。

エリートなどで採用されていた2Lの直4 DOHCエンジンを、重心を下げるために45度傾けて縦置きに搭載した。
1978年にはマイナーチェンジを受け、S2となる。機能面ではオーバーヒート対策のため冷却ファンが追加された。エクステリアではフロントスポイラーの装着やエアインテークの追加、サイドシルのブラックペイントなどが施されたのが特徴で、エアコンやコノリーレザーのインテリアなどがオプション設定されている。エンジンなど基本的なメカニズムは変わらなかった。
そして、1980年のジュネーブ モーターショーで「エスプリ ターボ」が登場する。2.2Lの直4 DOHC16バルブエンジンにギャレット製T3ターボチャージャーを装着し、最高出力213ps/最大トルク27.6kgmを発生。いかにもスーパーカー的なスタイリングにふさわしいパワーを得て、名実ともにスーパーカーになった。
コーリン・チャップマンは1982年に急逝したため、このエスプリが彼が手がけた最後のロータス車になる。また、1980年代以降のモデルでは、トヨタがロータス カーズにセリカXXのサスペンション開発を依頼した関係などもあり、トヨタ製のパーツがエスプリの各部に採用されている。
その後もエスプリはボディデザインを変更したり、V8エンジンを搭載するなどの進化を続け、1976年の初代モデルから、2004年の最終モデル、V8アニバーサリーの生産が終了するまでに28年間にわたって実に1万台以上が生産されたヒット作となった。

ルーフが低い上にテールもなだらかに下がるシェイプのために、より低さが際立つリアビュー。
ロータス エスプリS1 主要諸元
●全長×全幅×全高:4190×1860×1110mm
●ホイールベース:2440mm
●車両重量:900kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●総排気量:1971cc
●最高出力:160ps/6200rpm
●最大トルク:19.4kgm/4900rpm
●燃料・タンク容量:有鉛ハイオク・70L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前195/70HR14、後205/70HR14