モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が8月28日からモーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌の内容の抜粋をお届けする。まずはその前段として、ランエボ登場以前の三菱のモータースポーツ活動について複数回に分けてお届けしよう。

ギャラン16LGSがサザンクロスラリーを制して脚光を浴びる

1969年はラリーマシンの次期車両として1968年発売の「コルト1500SS」を選択した。同車は、サーキットで活躍したコルト1000ホイールベースと全長を拡大したコルト1500をベースに改良し、2ドアモデルとしてラインアップに加えられた車両だった。これをベースにフォーミュラマシンのコルトF2AのR46型エンジンをラリー用に改良したものを搭載し、ラリー車として強化されていた。

第4回サザンクロスラリーに出場した2台のコルト1500SSはこれまで以上の成績を目指したが、120馬力を発生する高出力エンジンとサスペンションとのマッチングがうまくいかず、優勝は果たせず前年と同様の総合3位となった。1969年のサザンクロスラリーには、コルト1500SSに加え、2台の「コルト11FSS」も投入した。同車のベース車両は、コルト1000Fを100ccボアアップしたコルト11FのSUツインキャブ装備で、最高出力73馬力に達していた。すでに国内ラリーでは優勝など実績を挙げていたコルト11FSSは、このサザンクロスラリーで総合7位の成績を挙げ、コルト1500SSとともに三菱のマニュファクチャラー賞獲得に貢献した。

画像: 1969年はコルト1500SSをサザンクロスラリーに投入。優勝を目指したが、シャシーとエンジンのマッチングがいまいちで3位に終わった。

1969年はコルト1500SSをサザンクロスラリーに投入。優勝を目指したが、シャシーとエンジンのマッチングがいまいちで3位に終わった。

コルト11FSSはコルト1500SSの次期競技車両として1970年に活躍、同年6月末から7月初頭に開催されたサザンクロスラリーと並ぶオーストラリア最大のラリーのひとつであるアンボールトライアルに参戦した。3台のコルト11FSSは、総合4、6、7位、クラス1〜3位独占という好成績を残した。また例年どおり、サザンクロスラリーにも出場したコルト11FSSは総合3位を獲得した。このような中で、三菱自動車が、トヨタや日産と異なるコンセプトのクルマとして世に問うたのが1969年に登場したコルトギャランだった。これは真に高性能スポーツセダンと呼べるクルマとなっていた。トヨタや日産も、高性能バージョンを用意していたものの、ベース車はごくおとなしい性能のクルマであったが、ギャランは高性能車が中心であることが特徴だった。
 
他のメーカーのクルマでラリー出場するには大幅に改良しなくてはならなかったが、ギャランはラリーでの戦闘力を発揮できるクルマとして開発されていたのが強みだった。ようやく三菱が、乗用車部門での存在感を示すことができたのだった。日産自動車もサファリラリーなど海外の過酷なラリーに挑戦していたが、車両はモータースポーツ部門が苦労してチューニングしたもので、他のメーカーも同様であった。これに対して、三菱自動車は車両開発の段階から、ラリーなどモータースポーツでの戦闘力があるクルマに仕上げていたのである。

1970年、自動車メーカーとして一貫性を持つためにトラックやバスを製造していた東京製作所を含めて、三菱重工業から自動車部門を統合し、独立して三菱自動車工業が設立された。この時、モータースポーツ支援にも独自のスタンスをとった。多くのメーカーはラリーに出場する人たちをバックアップするだけであったが、三菱はメーカーとしてラリーで好成績を挙げるための体制をとった。これがランサーエボリューションに繋がる発想で、三菱の一貫した開発思想でもあり、事実上、初代ギャランによってスタートしたものである。

画像: 1972年は、コルトギャランAⅡGSからモデルチェンジされて、150馬力までチューニングしたギャラン16LGSがサザンクロスラリーを制した。

1972年は、コルトギャランAⅡGSからモデルチェンジされて、150馬力までチューニングしたギャラン16LGSがサザンクロスラリーを制した。

1971年からは、コルトギャランによるラリー活動が本格的になった。このクルマはSOHCのサターンエンジンという、当時画期的なエンジンを積んでいた。このころの市販車用エンジンの出力はバラツキがあり、多くのメーカーのエンジンが公称馬力の80%くらいの性能だった。それに比較して、三菱は公称馬力の90〜95%くらいの性能が出ていたという。コルトギャランシリーズにはAⅠ型とAⅡ型、AⅡGS(グランドスポーツ)型の3車種がラインアップされ、このなかからAⅡGSをベースにラリーマシンが開発された。AⅡGSは新しい1.5リッター4G31型のSUツインキャブレター仕様エンジンを搭載したバージョンだ。

その年のサザンクロスラリーでは、ゴール目前までトップをキープしていたが、トラブル発生により3位に後退。しかし、デビュー戦で総合3位と上々の結果を残した。1972年には140馬力だったAⅡGSをリファインし、1.6リッターで同150馬力に向上させた「コルトギャラン16LGS」を投入。その結果、ギャラン16LGSは三菱車初の国際ラリー総合優勝を達成。1972年は1967年から国際ラリーに挑戦を続けてきた三菱のモータースポーツ史において、非常に意義のある年となった(以下次回に続く)。

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