2011年7月、軽規格の電気自動車「三菱 i-MiEV」が性能をアップするとともに、「G」と「M」の2グレード構成となって新たに登場した。2010年4月から正式に個人向け販売をスタートした「i-MiEV」だが、その1年半後には早くも、性能向上と低価格モデルの導入により、さらに魅力を高めていた。では当時「i-MiEV」はどう受け入れられたのか。Motor Magazine編集部では、この新型「i-MiEV」の国内試乗会の模様をレポートしているので、今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年11月号より)

走り出すなり、気持ち良さを実感

試乗会が開催された箱根のワインディングロードで、i-MiEVの走りを思う存分、楽しませてもらった。i-MiEVは都市部では何回か乗ったことはあるが、本格的なワインディングロードでの試乗は初めてのこと、そして走り出すなり、その気持ち良さに驚いてしまった。これは今回のマイナーチェンジとは直接関係なく、2年前のデビュー当時からのことだろうが、あまりにも楽しかったので、そのあたりのことを改めて報告することから始めたいと思う。

まず後輪駆動であることが大きい。モーターが後ろにあるからリアミッドシップ。まるでポルシェボクスターである。前後重量配分はベースのiと同じで45対55だ。上り坂や急加速時には駆動輪に荷重が十分にかかるので安定感がある。そして、前輪は操舵だけを受け持つので、ハンドリングのリニアリティが高い。さらにベースのiよりも重心が70mm低く、180Nmの最大トルクはモーターが回転し始めると同時に発生するのだから、ワインディングロードの走りが、楽しくないわけがない。i-MiEVの走りの良さを再認識した。

画像: 上級グレード「G」の最高出力は64ps。ブレーキペダルを踏むと、従来モデルよりも早いタイミングで回生ブレーキが入るが、そのフィーリングはよく、違和感はまったくと言っていいほどなかった。

上級グレード「G」の最高出力は64ps。ブレーキペダルを踏むと、従来モデルよりも早いタイミングで回生ブレーキが入るが、そのフィーリングはよく、違和感はまったくと言っていいほどなかった。

実質200万円を切る車両価格を実現

さて、今回のマイナーチェンジはポイントがふたつある。まず上級グレードの「G」だが、バッテリー容量を変更せず、車両統合制御技術の改良、ブレーキペダル連動回生ブレーキの新採用で、一充電あたりの走行可能距離を150kmから180kmへと2割伸ばしたのだ。ガソリンエンジンの燃費を2割向上させたとなれば、それは大きなニュースだが、i-MiEVはこのマイナーチェンジで同様のことをさりげなく成し遂げた。商品戦略本部の貴志部長は「まだまだできることは多いので距離はさらに伸びると思う」と語る。エネルギー回生をどこまでどのようにやるのかということは、これからのEVにとって大きなテーマのひとつになるだろう。

このブレーキペダル連動回生ブレーキの作動具合は、パワーメーターを見ているとよくわかる。ブレーキペダルを踏むと、従来モデルよりも明らかに早いタイミングで、メーターは“Charge”方向へ振れる。そして、この回生ブレーキはフィーリングがよく、違和感はまったくと言っていいほどなかった。

もうひとつのポイントは、エントリーグレードとして「M」が新設定されたことだ。機能、装備を絞り、さらに駆動用バッテリーの容量を「G」が16.0kWhであるのに対し10.5kWhにするなどして、車両価格を「G」より120万円も安い260万円としたものだ。これに国の補助金が72万円出るので実質188万円となる。さらに自治体による補助金がプラスされることもある。

たとえば神奈川県ならさらに37万円(ただしオプションで5万2500円の急速充電器装着が必要)、そしてそれが横浜市であればまたまた15万円(代替車必要)の補助金がつく。いくつかの条件をクリアした上で横浜市の住民であれば、なんと車両価格は139万2000円になるのだ。

これはかなり魅力的だ。一充電あたりの走行距離は120kmと「G」の3分の2だが、使い方を割り切ればよいだけのこと。また、最高出力は41psに抑えられているが、「G」と同じ試乗コースを「M」で走ってみた結果、明らかにワインディングの上り坂では非力さを感じるが、平坦路であれば問題はなく気持ちよく走ることがわかった。都市部のコミューターとして、またガソリンスタンドの撤退が相次ぐ過疎地域のパーソナルカーとして、これは最適なクルマではないかと思った。実際に初期受注は目論見どおり好調で、「G」と「M」グレードの割合は半々だそうだ。

2010年4月の個人向け販売開始から1年半ほど経過したが、三菱自は先駆者だからこそ得ることができたユーザーからの声やメディアの評論などを十分に消化して、いいマイナーチェンジをしたと思う。そして横浜市民としては、「M」が気になって仕方がない。(文:Motor Magazine編集部)

画像: エントリーグレード「M」の最高出力は41psに抑えられているが、これは「G」のEcoモードと同レベル。平坦路であればストレスはない。

エントリーグレード「M」の最高出力は41psに抑えられているが、これは「G」のEcoモードと同レベル。平坦路であればストレスはない。

三菱 i-MiEV G 主要諸元

●全長×全幅×全高:3395×1475×1610mm
●ホイールベース:2550mm
●車両重量:1110kg
●パワーユニット:モーター
●バッテリー容量:16kWh
●最高出力:47kW(64ps)/3000-6000rpm
●最大トルク:180Nm(18.4kgm)/ 0-2000rpm
●駆動方式:RWD
●車両価格:380万円(2011年当時)
(クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金の対象、上限は960,000円。その他、自治体により補助金制度あり)

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