細部の煮詰めが行われ、王者としての地盤を強固なものにした
サスペンションに関してはフロントが、ストラットリアがマルチリンクを引き継ぐ。ここはエボリューションⅡで改善したため大きな変更はないが、リアサスペンションのジョイント部のピロボール形状の変更など細部を煮詰めている。

WRCを戦うランサーエボリューションⅢグループA仕様の透視図。改善に継ぐ改善で戦闘力を増していった。
エクステリアは冒頭でも触れたが、WRCのイメージを強調したエアロパーツが目立巨大なリアウイングやフロントエアインテーク、サイドステップなど地味ながらスポーティという印象で売っていたランサーエボリューションが派手路線に転向したと感じたユーザーも少なくない。WRCでの活躍のイメージもついたため、当初のホモロゲーション用のクルマか商売になるクルマとして三菱自動車的に格上げされた結果でもある。そのために見た目のインパクトに重点が置かれたのも頷けるところだ。
国内のラリーやダートトライアルでは、リアウイングが大きな効果を生むまでのスピード域にはなかなか達しないというのが実情だった。ただフロントエアダムの両サイドにブレーキ冷却用のエアダクトを設けたのは実用面で重要だった。とかくブレーキに負担のかかるランサーエボリューションには有効なパーツだった。
ボディ剛性はエボリューションⅡと同等でもちろん一般ユースなら必要十分なものになっている。モータースポーツではサスペンションや駆動系のセッティングが進むと同時にボディの剛性まで考慮に入れたセッティングが行われるようになっていた。

1996年、エボリューションⅢで地元のフィンランドラリーを走るT.マキネン。この年は初のドライバーズタイトルを獲得した。
モータースポーツでの活躍を見ていこう。1995年APRC(アジパシフィック・ラリー選手権)に全力を注ぎ込んだ三菱自動車戦は第1戦のインドネシアラリーからランサーエボリューションⅢを投入し、その意気込みを見せた。デビューウインこそ逃したが、第3戦のマレーシアラリーから最終戦タイラリーまで破竹の4連勝を飾り、その強さはどのマシンをも寄せ付けず、マニュファクチャラーズとドライバーズの両タイトル獲得は当然の結果と見えた。
WRCには1995年シーズン途中の第4戦ツール・ド・コルスから参戦を開始。そしてAPRCも兼ねるWRCオーストラリアラリーでデビュー3戦目にして、早くも優勝してみせた。翌1996年には、エボリューションⅢの圧倒的なスピードがさらに証明されることになった。トミ・マキネンのドライブに・9戦中5戦勝を達成したのだ。エボリューションⅢはマキネンを初のWRCドライバーズチャンピオンに押し上げるとともに、三菱自動車に念願だったWRC初タイトルをももたらすこととなった。
ランサーGSRエボリューションⅢ主要諸元
●全長×全幅×全高:4310×1695×1420mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1260kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:270ps/6250rpm
●最大トルク:31.5kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:10.2km/L
●車両価格(当時):296.8万円