フェラーリ 512TR(FERRARI 512TR:1991〜1994)

リアまわりのデザインもテスタロッサと似ているようだが、テールランプの意匠などはかなり異なる。
テスタロッサの後継モデルとして登場した「512TR」。その車名は、フェラーリの流儀で5Lの12気筒エンジンを搭載していることを表し、TRはテスタロッサの略であった。もっとも外観はテスタロッサとほとんど変わらなかったため、テスタロッサのマイナーチェンジ版などと言われているが、実は似て非なるモデルであった。
シャシこそテスタロッサ用を小改良したものを流用しているものの、ミッドシップ搭載された5Lの180度V型12気筒DOHCエンジンは重心高を下げるためにドライサンプを採用し、エンジンとトランスミッションのアッセンブリーをテスタロッサよりも30mm低い位置に搭載する。
エンジンも排気量は変わらないものの、吸気系はプレナムチャンバーを再設計した新形状の吸入ポートの採用や、バルブの大径化などで吸排気効率を改善している。燃料供給装置もボッシュのモトロニックM2.7に進化した。

伝統のV12DOHCは、さまざまな改良を受けて38psもパワーアップし、428psの最高出力を発生した。
さらに新設計のピストンの採用などで圧縮比を10.0に上げ、カムプロフィールも変更したことで、38psものパワーアップを実現。欧州仕様では428ps、北米仕様では421psを発生した。最大トルクの50.0kgmに変わりはなかったが、テスタロッサを上まわる加速性能を手に入れた。
外観では、リトラクタブル式ヘッドランプやサイドのフィン付きエアインテークなどに変わりはないが、フロントグリルが丸みを帯びたデザインとなり、テスタロッサではグリルとウインカーなどが一体となっていたが、512TRでは分割されている。テールランプやアルミホイール、インテリアなどのデザインも変更された。
512TRは、1994年に発表されたF512M(Mはモディファイの略)へと進化する。ヘッドランプは固定式となり、最高出力は440psへとさらにアップした。ちなみに、現在のところフラッグシップモデルとして12気筒をミッドシップ搭載した最後のモデルとなっている。

1994年に登場したF512M。ヘッドランプは固定式となり、エンジンも440psへとパワーアップした。
フェラーリ 512TR 主要諸元
●全長×全幅×全高:4480×1975×1135mm
●ホイールベース:2550mm
●車両重量:1650kg
●エンジン種類:180度V12 DOHC
●総排気量:4943cc
●最高出力:428ps/6750rpm
●最大トルク:50.0kgm/5500rpm
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・98L
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●タイヤサイズ:前235/40ZR18、後295/35ZR18