モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回はAYCの装着により、それまでにはない曲がりやすさを得たランサーエボリューションⅣについて解説しよう。

モータースポーツでの活躍が更に目立つ!

サスペンションは、フロントがストラット、リアがマルチリンクとエボリューションⅢの形式を引き継いでいる。ただ形式は同じとはいっても、フルモデルチェンジによって基本設計は変わっている。具体的には、フロントに関してはマウント構造の変更やクロスメンバーの横剛性のアップ、さらにハブ回りのベアリング構造の変更が行われている。

画像: 従来モデルとはエンジンとトランスミッションのトランスミッションが反転された。前方排気とするためにシリンダーヘッドは新設計になっている。

従来モデルとはエンジンとトランスミッションのトランスミッションが反転された。前方排気とするためにシリンダーヘッドは新設計になっている。

リアもマルチリンクで構造は同じながらエボリューションⅣの専用設計で、サスペンションアームもすべて鍛造となり、耐久性を上げている。操縦性に大きく関連してくる部分としては、リアサスペンションが大きくストロークしたときの対地キャンバー変化を減少させたことが挙げられる。これは、モータースポーツでサスペンションのセッティングをする際に非常に重要な部分だ。エボリューションⅢまでは、リアのサスペンションセッティングが難しいと言われることが多かったが、この変更により、簡単とはいかないにしても、ある程度はセッティングを出しやすくなったと言われた。

ボディについて見ていくと、ベース車としてのランサーがフルモデルチェンジされたため、当然エボリューションⅢまでとは別ものとなっている。モデルチェンジによるボディ剛性のアップに加え、ファミリーカーとしてのランサーとは一線を画し、エボリューション用の補強がなされ、ハードな使用にも耐えられるようになったのは進化点だ。ただし剛性が高くなった反面、車重が重くなるのは避けられず、GSRで1350kg、RSで1260㎏となってしまっている。ボディ自体が大きくなったことも,
一般ユースでは喜ばしいことだが、競技ユースではコンパクトさのメリットが薄れた。

画像: GSRエボリューションⅣのインパネまわり。視認性に優れるホワイトメーターを採用。MOMO社製3本スポーク本革巻きステアリングホイールはエアバッグ内蔵型。

GSRエボリューションⅣのインパネまわり。視認性に優れるホワイトメーターを採用。MOMO社製3本スポーク本革巻きステアリングホイールはエアバッグ内蔵型。

空力関係パーツとしては、ボディ形状が変更されたことにより、ボディ自体の空力特性が上がったことが好ましく、さらにフロントエアダムやリップスポイラーリアウイングも、より洗練されて効果的なものとなっている。エボリューションⅢのデザインが、空力パーツの装着により迫力のあるものになったのと比較すると、エボリューションⅣは全体的なまとまりのあるスマートなデザインになった。

ヘッドランプは、ユニット内にポジショニングランプが内蔵されたものになった。バルブはハロゲン式のH4球。さらにPIAA製の大型フロントフォグランプが採用されている。エボリューションⅢまでと比べて、リアコンビネーションランプの形状も大きく変わって、デザイン性が際立つようになった。タイヤサイズは、GSRが205/55R16、RSが205/60R15となっている。ブレーキディスクサイズは、GSRがフロント16インチとなった。

画像: 1997年のWRC第5戦。グループA仕様のエボリューションⅣに乗るトミ・マキネンは、オールターマックのカタルニアラリーで優勝。エボⅣの強さを見せた。

1997年のWRC第5戦。グループA仕様のエボリューションⅣに乗るトミ・マキネンは、オールターマックのカタルニアラリーで優勝。エボⅣの強さを見せた。

WRCを中心にモータースポーツでの活躍を見ていこう。1997年は、WRCではワールドラリーカー(WRカー)が走れるようになった年だ。WRカー規則とは、グループAで優勝争いができるようなハイパワー4WDを市販車に持っていない自動車メーカーも優勝争いに参加できるようにする、という意図から生まれたものだ。WRカー規定では、年間2万5000台生産したクルマをベースにするのであれば、ほぼ自由に改造が許される。つまり、ファミリーカーをベースとしても事実上のラリー専用マシンとすることができるわけだ。この規定に合わせてスバルやフォードがWRカーを投入してきた。

画像: 同年の第10戦ラリー・フィンランド。95年のエボⅢ時代から98年のエボⅤまで、マキネンはランエボで5連勝を重ねた。

同年の第10戦ラリー・フィンランド。95年のエボⅢ時代から98年のエボⅤまで、マキネンはランエボで5連勝を重ねた。

三菱自動車は、ここで市販車ベースのグループAにこだわりを見せた。それだけランサーエボリューションのポテンシャルに自信があったともいえるだろう。エボリューションⅣも、この年から新たにシーケンシャルトランスミッションを採用し、操作の確実性とタイムアップを突き詰めた。もちろん従来のアクティブ4WDシステムやアンチラグシステムなどを使い、グラベル、ターマックを問わずあらゆる路面で速さを見せることになる。シーズンを通してほとんどメカニカルトラブルに見舞われることがなかったのも特筆される。こうしてエボリューションⅣは、トミ・マキネンの2年連続WRCドライバーズタイトル獲得に大きく貢献した。

ランサーGSRエボリューションⅣ主要諸元

●全長×全幅×全高:4330×1690×1415mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1350kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:36.0kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:9.7km/L
●車両価格(当時):299.8万円

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