モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回はトレッド拡大や倒立式ショックアブソーバーで走りの性能を向上させて人気になったランサーエボリューションVについて解説しよう。

フロントヘリカルLSDがGSRにも採用された

駆動系は、センターデフにビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDであることは従来と変わらない。GSRのリアデフにはエボリューショIVから引き続き、センサーからの情報を使い、油圧でクラッチで制御し、左右のタイヤの駆動トルク移動でクルマの旋回力(ヨー)を発生させるAYCを採用した。さらにRSに採用されたフロントヘリカルLSDが、GSRにも採用された。ヘリカルLSDは、絶対的な効きの面では多板式LSDに比べれば劣るものの、基本的にはオイル交換さえしていればオーバーホールまでは必要ないというメリットがGSRにも採用された理由のひとつだろう。

画像: リアビューも迫力のあるもの。リアウイングの仰角を4段階調整とし、低速から高速まで走行条件に応じてセッティングできる。

リアビューも迫力のあるもの。リアウイングの仰角を4段階調整とし、低速から高速まで走行条件に応じてセッティングできる。

シャシについて見ていこう。エボリューションIVでは一般的には性能アップしたのは間違いないが、国内モータースポーツを考えた場合には、エボリューションIIIに負けてしまう場合も多かったのは冒頭のとおり。しかし、エボリューションVになり確実にエボリューションIVよりも速く走れるようになった。まず効果的だったのがトレッドの拡大だ。これによりコーナリングスピードが上がり、コーナリング中の安定性も高まった。

ショックアブソーバーは、フロントに倒立式を採用されたことが注目された。通常のショックアブソーバー(正立式)はピストンロッドが上から出ているのに対し、倒立式はピストンロッドが下から出る構造になる。下のピストンロッド側はアウターチューブで保護される。文字どおりショックアブソーバーが逆さまについているわけだ。

画像: GSRのインテリアは、基本デザインはエボリューションIVと同一。ただシフトノブは小型化され、トリムデザインもブラック基調になった。

GSRのインテリアは、基本デザインはエボリューションIVと同一。ただシフトノブは小型化され、トリムデザインもブラック基調になった。

これによりどういうメリットがあるのかというと、まず操縦性に大きく影響するとされるバネ下重量の軽減が図れる。正立式のショックアブソーバーは、重いオイル室やガス室を伴った本体とシェルケースが上下する。そうすると、路面からタイヤを通して強い入力が入ったときにスプリングが重いシェルケースからの力を受け止めなければならず、今度はスプリングがそのケースを押し返すまでにタイムラグが生まれる。倒立式ショックアブソーバーであれば、バネ下はピストンロッドとアウターチューブはあるものの、相対的に軽いものを受け止めればよいことになり、路面からの入力に素早く反応できる。つまり、路面への追従性がよくなるというわけだ。

画像: リアに装着されたオーバーフェンダーは、ドアを開閉することを考えて、ドア部とリアクォーターパネル部とで分割される形状でセットされている。

リアに装着されたオーバーフェンダーは、ドアを開閉することを考えて、ドア部とリアクォーターパネル部とで分割される形状でセットされている。

もうひとつ倒立式のメリットとして、ストラット形式のサスペンションではどうしても弱いとされる横方向の剛性(キャンバー剛性)を向上させることができるという面もある。ストラット式の場合、ショックアブソーバー自体がサスペンションアームの役割を持つ。特にコーナリング中に横からの入力があった場合、その力によってストラットに横から入力が入ってしまい、結果としてピストンロッドの動きが悪くなる場合がある。倒立式は、ショックアブソーバー本体が上側、それを支える太いアウターチューブが下側にあることによって、デメリットをある程度解消してくれるわけだ。

ブレーキシステムは、動力性能の向上に対応し、GSRにはフロントに17インチ用ディスクとブレンボ社製の4ポットキャリパーを採用している。リアは16インチ用ディスクと2ポットキャリパーだ。エボリューションIVのリアは1ポットだったので、これは大きな変更点だ。耐フェード性はも
ちろん、高温時の効きの安定性が大幅に向上されている。

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