モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回はトレッド拡大や倒立式ショックアブソーバーで走りの性能を向上させて人気になったランサーエボリューションVについて解説しよう。

WRCは13戦7勝で二冠達成

エボリューションVのモータースポーツでの活躍は目覚しかった。エボリューションVのデビューは1998年シーズンのホモロゲーション取得のタイミングに合わせ、第5戦カタルニアラリーからとなった。当初はセットアップに時間が必要だったもののトミ・マキネンの活躍もあり、デビュー3戦目のアルゼンチンラリーで初優勝。そして、シーズンも後半となってから真価が発揮された。

マキネンがWRC記録となる同一ラリー5連覇を達成した第9戦フィンランドラリーを皮切りに、最終戦まで4連勝を果たしたのである。シーズン前半のエボリューションIVでの2勝を含めると、この年は13戦7勝を記録。三菱自動車はWRCに挑戦すること20余年にして、ついにマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した。さらに、マキネンが史上初のWRC3連覇も達成し、三菱はマニュファクチャラーズ/ドライバーズの二冠を獲得した。そういう面でエボリューションVは特別なクルマになったといえる。

画像: 空力的な進化により舗装路での速さを増したエボV。写真は1998年のサンレモでのトミ・マキネン。

空力的な進化により舗装路での速さを増したエボV。写真は1998年のサンレモでのトミ・マキネン。

何より価値があったのは、ライバルがラリー専用のWRカー規定のクルマであったのに対し、市販車の性能が大きくものをいうグループAでのタイトル獲得となったことだ。これは称賛されるべき部分であり、また三菱自動車の市販車ベースでのラリー参戦のこだわりともいえる。エボリューションVが戦闘力で有利だった面を見ていくと、まずエボリューションIVから大きく改良され、ワイドトレッド化されたことだ。エボリューションIVはターマック(舗装路)でやや苦戦したのに対し、エボリューションVはその弱点を克服し、ライバルのWRカーと渡り合った。

国内モータースポーツで見ると、エボリューションVは、エボリューションIVで失いかけた国内モータースポーツユーザーの信頼を取り戻したクルマになったといえる。RSが使用されることが主だったため、AYCがその本領を発揮することはなかったが、コンベンショナルなフルタイム4WDとしては、完成形に近いものになった。使いやすいエンジンと、トレッド拡大による安定感が最大の武器となった。また、異色だがスーパー耐久レースでは、プーマランサーエボリューションVがチャンピオンとなった。

ランサーGSRエボリューションV主要諸元

●全長×全幅×全高:4350×1770×1415mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1360kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:38.0kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:9.7km/L
●車両価格(当時):324.8万円

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