BMWは出荷時の全ディーゼルモデルにCN燃料を採用
2024年末、BMWは2025年1月から、ドイツで生産されるすべてのディーゼルモデルに、軽油代替の再生可能燃料「HVO100」を充填して出荷している。全世界的に異常気象に見舞われている今、環境負荷低減への取り組みはまさにまったなし。そういう意味では、とんでもなくインパクトがある取り組み、と言っていいだろう。

BMWグループの環境負荷低減に向けた取り組みが、ディーゼル車に対するHVO100の初期充填。納車時のCO2排出量を最大90%削減できるという。使用されるのは、フィンランドのバイオ燃料大手Neste社のHVOだ。(写真:BMW )
使用済みの食用油などバイオマス(生物資源)原料を水素化処理したHVO(「HydrotreatedVegetable Oil:水素化植物油」)は、ドロップインが可能な実質的カーボンニュートラル(CN)燃料の代表選手だ。
欧州では次世代バイオディーゼルとして、北欧地域を皮切りにイタリアで一般向けの給油施設でも「普通に」取り扱われてきた。2024年からはドイツ、フランスでも販売が承認されている。ほかにインドネシア、マレーシア、ブラジル、タイ、アルゼンチンなどでも軽油混合の「B●●」(●●の部分は、混合率の数値が入る)の販売が、供給サイドに義務付けられているようだ。
かたや日本はと言えば・・・もろもろ事情があることはわかっているつもりでも、ことCN燃料(次世代バイオフューエルも含めて)の社会実装に関しては、圧倒的に後れをとっているとしか言いようがない。
もちろん取り組みは始まっている。2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、「自動車・船舶・鉄道・建設機械等の分野で幅広く使用される軽油に対しては、原料供給制約があることも踏まえた上で、バイオディーゼルの導入を推進する」と明記された。

HVOは原料の成長過程でCO2を吸収、燃焼時の排出で相殺することで実質的カーボンニュートラルを実現する。化石由来燃料と同一の性状を持つ液体燃料ということで、特別な給油インフラを必要としない「ドロップイン」が可能になる。(図:マツダ)
もっとも、触れられているのは80ページ超のレポート内のわずか2行と、決意表明としてはそうとうささやか。ちなみにガソリンに関しては、具体的な数値目標が挙げられている。2030年度までにバイオエタノールの混合率を最大濃度10%(E10)、2040年度までに同20%(E20)とした低炭素ガソリンの供給開始をそれぞれ「追求する」という。
対する次世代バイオディーゼルの社会実装に向けては、やっと「高いハードル」が認識されてきたところ、といった印象だ。
先の基本計画を受けて資源エネルギー庁がまとめた「バイオディーゼルの利用に関する検討会」の資料によると「HVOについてはJIS規格上の取扱いが定まっておらず、高濃度で軽油に混合することの品質管理も定まっていない」とのこと。
同時に「既存の化石由来軽油に比べて密度が小さいことから地方税法の軽油引取税における軽油の定義に該当していない。そのため、HVOを高濃度で軽油に混合した燃料も地方税法上、軽油と見なされない。したがって、HVO又は軽油・HVO混合燃料は、混和・かさ増しによる不正軽油を防止する地方税法上の規制(事前の製造承認や譲渡承認等)によって流通が大幅に制限される」などの課題に対する検討が必要になってくる、という。
単体運用であれ混合であれ、本格的なHVO導入を図るためにはまず、さまざまな規制・税制のほうも国際的な品質基準や規制内容への「キャリブレーション」が必要になるようだ。