軽油と混合でも単独でも利用することが可能
そんな状況の中で、日本におけるバイオディーゼル普及のカギを握ると思われるパートナー企業たちが合同で「次世代バイオディーゼル試乗会」を主催したのは、2025年8月の夏真っ盛りだった。

中央が次世代バイオディーゼル燃料HVOを混合した、サステオ51。その左右にある「FAME」が廃食油をメタノールと反応させて精製される第一世代のバイオディーゼル燃料だ。
プレゼンを行ったのはマツダ株式会社、いすゞ自動車株式会社、株式会社ユーグレナ、平野石油株式会社そして三井住友ホールディングスの5社。それぞれに「つくる、はこぶ、つかう」というさまざまなプロセスにおいて、バイオディーゼルの社会実装によるCO2排出量の削減を目指している。
前述したとおり、欧州を始めとする海外におけるCNFに関する取り組みの進度に比べて、ずいぶんのんびりしている日本の「国」としての取り組みだが、さまざまな壁を前にしながらも挑戦を続ける企業の「今」は、非常に興味深いものがあった。
「つくる」に関して言えば、ユーグレナが開発した「サステオ51」は日本向けの軽油代替燃料として現時点での最適解と考えていいだろう。グローバルで持続可能な燃料として認められているHVOを51%混合しているのだが、この微妙に「きっかり半分ではない」というところがミソだ。
いわゆる燃料としての質を担保するためのJIS規格だけでなく、日本における混和型バイオディーゼル導入の高い壁になっている地方税法上の「軽油規格」にも適合。省エネ法の改正などによって事業者に義務付けられた化石由来のエネルギー依存からの脱却に向けた取り組みを、後押しすることも可能にしている。
端的に言えば「もっとコスパのよいCO2削減」が可能になる、というワケだ。惜しむらくは、SAFも含めたバイオ燃料生産の本格的な商業化に向けて、開発・生産の軸足が海外に移ってしまったことだろうか。
神奈川県横浜市鶴見区で2019年春から稼働していた日本初のバイオディーゼル燃料の実証プラントには、いわゆる「地産地消」の絶好のモデルケースになることを勝手に期待していたのだが、2024年1月末にその役目を終え、稼働を停止した。

ユーグレナ、PETRONAS、ENIの合弁事業で建設・運営される商業規模のバイオ燃料製造プラントは、PETRONAS社の石油・石油化学コンプレックスPengerang Integrated Complex内(写真)でに建設され、2028年下半期の稼働開始を予定している。年間約10万KLのSAF(持続可能な航空燃料)及びHVO(次世代バイオディーゼル燃料 )等のバイオ燃料を取り扱うことが可能となる。(写真:ユーグレナ)
代わりに立ち上げられたプロジェクトが、マレーシアにおけるバイオ燃料製造プラントだ。マレーシアの元売り大手PETRONAS社の子会社や、バイオ燃料大手のイタリアENI社の子会社などと合弁会社を設立、2028年下期までの稼働開始を目指しているという。
この新拠点から、ユーグレナは年間約10万キロリットルのバイオ燃料(航空機用SAFを含む)を日本に供給することを目指している。いわゆる第一世代のバイオディーゼルFAMEの2023年度通しての国内生産量が1万キロリットルほどしかないことを考えれば、飛躍的な増加、と言っていいだろう。
原料として使用済み植物油、動物性油脂、植物油の加工に伴う廃棄物といった「王道」を用いるとともに、中期的には微細藻類由来の藻油などのバイオマス原料からの製造もあきらめてはいない。「ミドリムシ(微細藻類ユーグレナ)」の食用屋外大量培養技術を世界に先駆けて確立し、さまざまな事業を展開してきたユーグレナ社の底力に、大いに期待したいところだ。