新しいWRC規則を織り込んでの進化を見せた

4G63型エンジン+インタークーラーターボと熟成のフルタイム4WDシステムで、その走行性能は群を抜くものとなった。
第二期ランサーエボリューションはエボリューションⅣではじめり、エボリューションⅤで熟成に見せ、1999年にはエボリューションⅥが登場した。エボリューションⅥへのモデルチェンジで、ランサーエボリューションは大きく変わった。これは単に性能アップだけではなく、1999年のWRCのレギュレーションへの対応を盛り込む意味もあった。性能的にはエボリューションⅤから圧倒的な進化とはいえないが、エンジンが強化されたことは、特に国内モータースポーツユーザーを中心に好意を持って迎えられた。順を追ってみていこう。
パワーユニットは、従来どおり4G63型エンジンを搭載しているが、冷却性能を向上向上させるために水温制御方式の変更、ピストンのクーリングチャンネルの追加、エンジンオイルクーラーの大型化などが図られている。さらにエンジンのエアインテークホース径の拡大、ターボチャージャーの吸気口径の拡大などにより、高回転域での性能、レスポンスの向上も図られた。ターボ関連では、ターボチャージャーにチタンアルミ合金製タービンホイールを採用することにより、吸気系の圧損低減とともにレスポンス向上、高回転域での性能向上を図った。これにより数値に現れないパワー感の向上を実感できるようになった。駆動系は、センタービスカスLSDを採用したフルタイム4WDは変わらず。これはすでに熟成されたシステムであり、信頼性は抜群となっている。

ナンバープレートを左にオフセットし、インタークーラーの冷却効率を最大限に引き出す。こんなこだわりもランエボならでは。
エボリューションⅥでは市販の状態でクラッチ強化が図られたのも注目された。回転を上げて一気にクラッチをつなぐレーシングスタートなどの急激なトルク伝達時においても、ロスのないツインプレートクラッチをオプション設定したのだ。それだけ強力なエンジンパワーを持っており、その上フルタイム4WDという機構が駆動系に負担を与えるからだ。
特にフロント、リアともに多板式LSDを入れた場合、4輪ともがっちりグリップしトラクションが高い反面、エンジンパワーが逃げる余地といえばクラッチくらいしかない。つまりクラッチに大きな負担がかかっているわけだ。ジムカーナ走行では、エンジン回転をドロップさせないように半クラッチを使用する場合もある。当然クラッチプレートの消耗も激しい。そうなると社外品の強化クラッチを入れ定期的なクラッチ交換や前後多板式LSDオーバーホールは必須となるが、ノーマル車でも強化されたことはありがたいことだった。
シャシ系の主な変更点としては、サスペンションジオメトリーを変更してフロントサスペンションのロールセンターを低くしたことと、リアサスペンションの各アーム類のアルミ鍛造化やリバウンドストロークの増大、ショックアブソーバーの減衰力強化、スタビライザーの強化などのチューニングが挙げられる。
ロールセンターに関しては重心の距離とのバランスがあり、重心がそのままでロールセンターを下げてしまうとロールが大きくなってしまい、スポーティな走行には向いているとはいいがたい面あった。そのため、これが単純に性能アップに貢献しているのかというのは疑問符がつくところでもある。ただし、一般走行での参戦で得た自然なロールと旋回性のバランスということでは納得できる部分でもある。またモータースポーツでの使用ということを考えると、スプリングレートをアップすることが多い。ロールセンターを下げるとロールが大きくなるというのは同じスプリングレートを前提としているので、スプリングレートを上げてしまえば事実上は問題ないともいえる。

