モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」がモーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回はスーパーAYCの採用で頂点に達したかと思われたエボⅧに、スペシャルなチューニングを行い、ファンを驚かせたランサーエボリューションⅧ MRついて解説しよう。

ショックアブソーバーは専用チューンのビルシュタイン

画像: トランクリッドの最下部に付けられた「Evolution MR」のエンブレムは、往年の名車、ギャランGTO MRの流れを引いたものだ。

トランクリッドの最下部に付けられた「Evolution MR」のエンブレムは、往年の名車、ギャランGTO MRの流れを引いたものだ。

シャシに関して見ていくと、ストラット/マルチリンクのサスペンション形式を継承しつつ新たなセッティングが行われている。変更点としてはロードホールディング性能の向上を狙い、ビルシュタイン社との共同開発によりレスポンスに優れる専用のショックアブソーバーを開発。一定のピストンスピード領域では減衰力を約30%下げる方向にしており、走りの質感も追求している。さらにリアのバンプストッパーの形状を最適化することによって、操縦安定性とロードホールディング性能とスポーティな乗り心地を実現している。

ボディはスチール製モノコックボディの国産車で初めてアルミ製ルーフパネルを採用し、ルーフパネルで約4.0kgの軽量化を実現したのが注目された。重心位置から遠く高い部材の軽量化により重心高の低下とロールモーメントの低減を実現、ハンドリング性能を向上させている。アルミ製ルーフパネルとスチール製モノコックボディの結合にはSPRというくさび状の特殊なリベットと構造用接着剤を併用した。熱膨張率の異なるアルミとスチールを結合させるために、製造工程で発生する歪みに対してルーフパネルの左右縦方向に一筋のデザインビードを設けることで対応、これによりルーフパネルの重量増加を最小限にとどめている。

画像: タイヤサイズは235/45ZR17というワイドなもの。ホイールはオプションのBBS製の鍛造アルミ合金を履いている。

タイヤサイズは235/45ZR17というワイドなもの。ホイールはオプションのBBS製の鍛造アルミ合金を履いている。

アルミ製ルーフはモータースポーツで、ランサーエボリューションを使用するドライバーに大きなインパクトを与えた。ルーフをアルミにするという方法は市販車ではメーカーしかできない画期的なことだ。さらに左右前後のドア内部のインパクトバーをスチール製からアルミ製に変更し、従来と同等の衝突安全性を確保しながら、合計で約5.3kgの軽量化を実現しつつ、フロント、センター、リアの、各ピラーとルーフパネルとの結合部に筋交い状の部材で効果的な補強を行いキャビン剛性をさらに高めた。

エクステリアとしてはエボリューションⅧから外観の形状変更は見送られたものの、カラーリングの変更や専用パーツの採用により超高性能車にふさわしい戦闘的で精悍な専用の外観となった。具体的にはヘッドランプとリアコンビランプのエクステンションをブラック塗装に、ヘッドランプ外側のプロジェクターレンズをブルーとして精悍さを際立たせている。またリア翼端板(スポイラーのアウターパネルの外側)をボディ同色から水平翼のカーボン素材に近いダークグレーの塗装とした。ディーラーオプションとなるがボルテックスジェネレーターも設定された。これはルーフ後端に装着するもので意図的に縦渦を発生させることで空気抵抗を低減させながらリアスポイラーのダウンフォースを高めるというパーツ。

画像: エンジンは中高速域でのトルク特性を向上。レブリミットまで一気に吹き上がり、持続するピークパワーが与えられた。

エンジンは中高速域でのトルク特性を向上。レブリミットまで一気に吹き上がり、持続するピークパワーが与えられた。

さらにマフラー後端のテールパイプ外周部に光輝処理を施すことで質感を向上させ、リア回りでのアクセントとした(RSを除く)。BBS社製の鍛造アルミホイール(メーカーオプション設定)はフィンタイプのデザインとし、剛性を確保しながらも1本あたり約1.25kgと最大限の軽量化を図った。また車両全体との統一を図ったダークグレーの塗装とした。インテリアはエクステリア同様、高性能車にふさわしい戦闘的で精悍なイメージを表現するため、各部をダークなトーンでコーディネートしたスポーティなものとした。従来のオフブラックモノトーンの内装基調色はそのままに、インストルメントパネルにはカーボン調のオーナメントをあしらい、センターパネルは虚飾を廃したブラックとした。

画像: 競技ベースのRSエボリューションも設定されている。国内のダート系競技のみならず、ジムカーナでも高性能を発揮した。

競技ベースのRSエボリューションも設定されている。国内のダート系競技のみならず、ジムカーナでも高性能を発揮した。

レカロ社製のフロントシートは身体が滑りにくい上質なブラックモノトーンのスエード調生地を採用するとともに、ショルダーサポート部に発泡樹脂コーティングを施したニットを採用することで、ホールド性を高めている。シートと同様のスエード調生地をドアトリムにも採用し、統一感を持たせた。フロアコンソールには「LANCER Evolution MR」のロゴをあしらったステンレス製のプレートを採用。なお、「MR」の文字部をレッドとすることで、トランクリッドのエンブレムと同様、その存在感をアピールした。ヨーロッパでは車内騒音に対しても厳し基準がありワンランク上の静粛性を果吸音材とメルシートを増やすなどの対策も施された。

ランサーGSRエボリューションⅧ MR主要諸元

●全長×全幅×全高:4490×1770×1450mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1400kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:40.8kgm/3500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:9.7km/L
●車両価格(当時):339.8万円

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